2世帯3動線のリフォーム
2009年12月完成 / 兵庫県丹波市
■ エピソード
お子様のお誕生を機に親子2世帯が一緒に暮らす事を決意され、メールにてお問合せを頂きました。
離れを新築して、母屋と繋ぐべきか、それとも今ある建物(母屋とそれに繋がる離れ)をリフォームすべきか、選択肢は分かれていましたが、繋いだ場合、母屋の耐震性能などが現在の建築基準法に合致していない事、新築した建屋のメンテナンスに手が掛かるのではと言った事などが決め手となり、リフォームを選択されました。
リフォーム前の建物は母屋とそれに繋がる離れと言う形式で建物が存在しておりボリューム的に、2世帯が生活するには充分満足している状態でしたので、新たに「母屋+離れ+離れ」と言う関係を生むよりは正解だったのではないかと思います。
又、3つ目の動線である学習教室は、リフォーム前は離れを使い行われていましたが、教室のボリュームこそ小さくなるものの、生徒数からすれば適度なスペースである部屋へ移し、他から通ってくる生徒達と家族の動線が適度な関係を保てるようになったのではないでしょうか。
これからは、お生まれになったお子様中心の生活となる事でしょう。
いつまでも家族のアイドルとして輝いて下さいね!
■ 概要
リフォーム部分面積 / 208.48 ㎡ ( 63.07 坪)
構造 / 在来軸組工法 2階建
仕上 / 外壁 ; 杉焼板張替え
内部壁 ; 珪藻土クロス
内部床 ; ナラフローリング、杉フローリング
設備 / オール電化
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以前は縁側が取り巻いていた部屋を寝室にしています。プライバシーの高い部屋ですので庭に面する開口はそのままに、他面は壁を増やしながら視線が下へ向く事で落ち着きのある空間を演出しようと試みました。 |
視線を下へ向かわせるために窓の高さを抑えた面です。 |
手入れの行き届いた面は大きく開口を取りました。 |
夜になると天井からの間接照明が空間をつくります。 |
落ち着いた書斎は以前使っていた本棚を再利用しています |
親世帯のLD。掘りコタツを採用し床座でゆったりと時間を過せるように配慮してます。左手の柱は通し柱で動かす事が出来ない柱です。 | |||||||||||||||||
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子世帯DK。テーブルに椅子と言うスタイルを選択された事で、目線の重心は少し高くなります。しかし天井高さや配色、窓の高さでそれらを調整しています。 |
子世帯居間。間口の狭いスペースですが収納量を確保し、テレビ周りのごちゃごちゃをすっきりさせようと言う狙いです。 |
学習教室。床は触らず、壁の位置、生徒の動線を考慮した専用の入り口を設け、コンパクトにまとめました。 | ||||||||||||||||||||
リフォームストーリー
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リフォーム前
伝統的な日本家屋、築40年程度の母屋に付随する形で後から建てられた平屋の離れは曲がり屋のようにつながり、綺麗に手入れされた日本庭園によって両者の関係を保っていました。
母屋は和室4部屋が繋がるいわゆる四つ間の両側に縁側を持つ贅沢な建て方で、柱も4.5寸もある太い材料が使われていました。
1期工事部分解体
住まいながらのリフォームですので生活スペースを確保しておかなければなりませんでした。そのために工事は計3期に分けて行われました。初めは、まず学習教室を移動すると言う事で、その移動先となる母屋の応接室からの解体が始まりました。
1期工事開始
今回は初めての施工者と言う事もあり、職人さんも初めて、お互い様子伺いしながらの現場開始となりました。
建築は設計と言う行為と施行と言う行為、それぞれが別々の人によって進められるために、その思いを伝える事の難しさがあります。
お互いに初めて同士なら尚更の事、
この年代の住まいは断熱と言う概念も無いために当然の如く、断熱材は入っていません。天井は断熱補強し、土壁は残せる範囲で残し、断熱補強しています。
工事途中
現場用に作成した施行図を壁に張りつけて確認しながら作業が進められました。
そして、生徒さんたちが安全に通れるようにスロープの勾配を緩くし直しました。
教室への上がり口も段差が大きいので1段ステップを確保しています。
1期工事間もなく完成!
今回の工事では以前カーペット敷きで使われていた部屋と言う事で傷みも少なかった事から床の張り替えは行わず、壁と天井の化粧直しをし、学習のための照度を確保するために照明器具を新調しています。又、生徒さんたちの動線を確保するために新たに入り口を設けました。
1期工事完了、そして2期工事の解体へ
1期工事も無事終了。無事授業も始められました。スペースは狭くなりましたがみんな、和気藹々で、撮影当日も「これ何に写るの~?」と言った質問も飛び出しましたが、流石プロカメラマン。そこは皆をおだてて、役者に仕立てました。

さあ、次は2期工事の開始です。ここからはいよいよ生活スペースです。
大工さんからは、「ちょっと勘をつかんだで~」と言われました。
2期工事は学習教室として使われていた離れの和室の続き間を親世帯の寝室、書斎、洗面に御風呂、トイレにチェンジする予定です。

と、天井を剥がしてみると、とんだハプニングが・・・
スズメバチの巣です。とんでもなく大きい!
しかし、幸いにしてもう空になった巣でした。ほっと一息です。
しかし、このハプニングはまだほんの序章に過ぎませんでした。
解体続く
数日後、全て解体が終わった離れ。
開けてびっくり!とはこの事で
写真のように土台と基礎のラインが大きくずれてしまっている。
しかも基礎は目で見ても明らかに直角ではありません。ここを施行した基礎屋さん、一体何やってたの?
そして次の写真は柱が乗る土台の下には基礎が無い、次は土台を継ぐ下にも基礎が無く換気口になってしまっています。
最初の事例は束を数箇所にいれ補強、次の事例はプラン上柱を取りましたので問題なくなりました。そして3つ目は土台を金物補強しています。
実はこの建物を建てたのは、知り合いの大工さんだったそうで、「知り合いだから信頼して頼んだのに~」とは奥様の悔しそうなお言葉でした。
そうです、いくら腕の良いと言われている職人さんでも図面無しではまともな家にはならない代表例なのです。
問題は基礎屋さんと、大工さんの連携が上手く出来ていなかった事。基礎の墨を出す時に誰も直角でない事に気付いていなかった事。せめて第三者の目でチェックし、ちゃんと図面があれば全て防げていた事なんです。
ずばり、私達の仕事の一部はここにあるのです。施主の目で専門的な立場で工事が行われる各工程の前に必ずチェックする事、住まいの品質を守るためには間違い無く必要になってきますよ。
補強
プラン上、邪魔になった緑色の位置の柱を抜くために梁の補強をして、そして鉄骨梁を渡して二重に補強した写真です。

断熱
さて、解体も終え2期部分の工事も始められました。床にはこれまでなかった断熱材を施行しています。
先ほど、解体続くで出て来た床柱を外してみると、何と無垢材でした。
お父様から、「これ使われへん?」と言われて、さてどうしましょう?
しばし、考え込む。
ひらめいた!「そうだ、掘りコタツの脚にしましょう!」と言う事で即決定!
丁度4本分取れるだけ、長さがありました。
邪魔者
闇夜に浮かび上がる天井を実現させるために壁と天井が取り合う部分の納まりは重要。しかしそこで問題が、丸い軒桁が使われていてそれが見えてしまうと、計画は台無しになるので、大工さんとしばし打ち合わせ、レーザーで丸桁の位置を確認してもらい、ちょっとだけ削ってもらう事に、特に強度には問題ありません。
丸桁と壁の取り合い
浮かび上がる天井
目指した天井も上手く行きそうです。
2方に縁側を回した以前のプランから角の柱を外す事は不可能でしたので1本残して映える内装をと考えたのが1本の柱に支えられた空間です。そのために天井も壁と引っ付くのでは無く、縁を切って浮いているように見せる事を考えました。
追い込み
ガラス入る
二期工事は母屋へ
離れの二期工事も終盤を迎え、いよいよ本陣、母屋の工事が始まりました。
離れの工事に並行して既に母屋の二期工事の範囲は解体済み
まずは足場の確保からと言う事で床を張る工事から開始です。
親世帯の居間には掘りコタツが欲しいと言う事でブロックでその部分を確保します。
基本の繰り返し
工事範囲は変わっても基本は同じ、断熱改修、下地をこしらえ天井や壁をつくる。こんな事を何度も何度も繰り返しながら工事は前へ進みます。
外壁を張替えますが、杉の焼板ですので以前と雰囲気は大きく変わりません。
ですので知らない人がこの住まいを見れば、どこをリフォームしたのか殆ど気付かないのです。
母屋も形が見えてきた
キッチンカウンターとなる壁の下地、対面はテレビ台。すこしずつ形が見えてきました。
離れの内装仕上げ工事
大工工事も終えて石膏ボードを張り終えた離れの工事は暫く、そのままとなっていましたが、ようやく内装仕上げの準備に入りました。

大工さんが作る家具
扉や引き出しなど可動部を含む家具は家具屋さんにお願いするとして、本棚などの棚物の工事は大工さんにも作れるように設計する事でコストも抑えられます。
そんな家具の一つ、テレビ台を作っている最中です。
そして外部では下水道配管工事が進みます。
リフォームの場合、水周りをこれまでとは別の場所へ動かす事もあります。
その場合、問題となるのがこれらの給排水管をどのように考えるかです。
元々、近くに配管があればさほど問題はありませんが、今回は親子世帯それぞれ別々に水周りを設ける事になりましたので、これまでには無い場所へ台所を配置しました。
上写真は犬走りの舗装を割って配管工事をしている所です。
新築の場合は先に地面を掘って配管を埋めた後で、舗装するのですが、リフォームでは舗装を割って、配管して埋めて、又舗装すると少し手間な事になります。
大工さんが作る家具も出来、そして・・・
大工さんが苦労して作ってくれた家具も上々の出来映え、そして苦心作の「ランダムな壁」も出来上がりです。
この家で使われる板材を全て使って壁にランダムに張る。このランダムさを加減するのが難しいのです。単調に偏らないように
キッチンも入り、
キッチンも据えられ、そして内装工事が始まりました。
下地の精度も重要ですが、石膏ボードの継ぎ目の処理を如何に上手く平滑に均せるかがプロの腕の見せ所。この処理に使うパテをたっぷりとつけてしまうのが素人、薄く付けて尚且つ平らに均せるのがプロです。(私の経験談です)
所で、あの材料のその後は?
離れの解体時、再利用する事にした床柱のその後、あの床柱はこのようにコタツの脚に生まれ変わりました。と言っても脚がほんの少ししか写っていませんので分り難くて申し訳ないのですが、あれだけ濃い色をしていた床柱が表面を落としてみると何と薄い色になりました。他の骨組みを桧で作ってもらう設計としていましたので色の対比がどうなるのか?と思っていたのですが殆ど違和感なく良い出来映えです。
浮かび上がる天井に照明が灯りました。
プロカメラマン参上
通常は全ての工事が終了してから、撮影に入ってもらうのですが今回は生活しながらの工事ですので工事が終わり使用可能になった箇所から早速、生活が始められるために、その前にカメラマンの中村氏に撮影に入っていただきました。
撮影に打ち込む中村氏
そして工事は最終章
丹波市外でお暮らしになられていた子世帯一家のための生活スペースの工事が3期工事のメインです。同じ屋根の下ですが、お互いが気兼ね無く、ある程度プライバシーを保ちながら暮らすために、気配は何となく繋がりながらでも今何をしているかは筒抜けにならないような、そんなつながりを保つために、両世帯間の「音」を極力抑えるための工夫が必要でした。
2階の和室続き間や1階のLDKスペースになる部分を解体、そこに付随する水周りは事実上、増築しています。以前ご両親の世帯で使われていたシステムバスを子世帯側で引き継いで使いたいとのご要望から、当初のプランを変更し、水周り動線を変更しました。そのために少し長い動線となりましたが、雨天時の物干しなどに活用できるスペースとしても使え、かえってその変更が良かったのかもしれません。
子世帯のLDKとなるスペース(上左)と屋根は掛かりながら事実上屋外であったスペース(上右)に水周りを配置しています。
床を剥がしたら
現場では2階の一部の床を剥がしています。そうすると出来上がった1階の天井裏が見えると言う、珍しい光景はリフォーム独特のものです。
1階では大工工事に先立ち天井から電気の配線がぶら下がっています。
照れ屋な大工さん
着々と工事が進む中、陽も沈み電灯が点されています。作業中の様子をカメラに収めようとレンズを向けると照れ屋な大工さんは必死に逃げていきます。
ラストスパート
同じ事を繰り返し、耐震、断熱、美観性を向上させながら工事は進みます。
違い
親世帯、子世帯間では生活スタイルが違います。
掘りコタツメインの床座生活を好まれる親世帯、テーブル主体の椅子座生活の子世帯。ですので当然キッチンカウンターも少しずつ違いが出ています。
ほぼ完成
建具と家具を残し、工事はほぼ完成。
養生を剥がし、クリーニング作業が済めば全貌が明らかになります。
出来た~!
長かった工事もようやく完成。ここまで約半年、長い道のりでした。
工事が始まる少し前に、お生まれになったお子様も、にこやかな顔を見せてくれるようになりました。
最後は全員揃って記念撮影
工事開始よりも少し早目にお生まれになったお子様は、会うときにはいつも笑顔を振りまいてくれました。
これからも、みんなに可愛がられて健康に育って下さいね。

お疲れ様でした~!
そして、有難う御座いました。
後日談ですが
「一番のお気に入りは寝室と書斎です~。」とは、お母様のお言葉
とても嬉しかったです。
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