リノベーションについて その19
雨漏りはとても気になる
このシリーズの「その8」の時に屋根替え工事
をした時の写真を少しだけ紹介させていただき
ましたが、リフォームやリノベーションでは屋
根からの雨漏りも気になる部位になります。昔
の建物では下屋の防水シートの立ち上がりが少
なく、その立ち上がり不足の部分から台風など
で雨が巻き上げられると、大変な雨漏りとなっ
て部屋の中を濡らしてしまいます。
立ち上がりとは
写真が下屋の防水シートの立ち上がりを写した
ものです。立ち上がりとは垂直壁面に沿ってど
れくらいシートが立ち上がっているかを指すの
ですが、この写真で約30cmほど立ち上がっ
ています。
昔の建物では
ところが昔の建物では5cmほどしか立ち上が
っていません。それでは強風で雨が巻き上げら
れると防水シートを乗り越えて建物の内側に入
り込み1階の天井から雨が漏り始めます。天井
に雨染みがあるのは、おそらくそれが原因の可
能性が高いと思いますが、他にも谷樋になって
いて、その谷樋が銅板で葺かれているため酸性
雨で銅板が腐食し穴が開いて雨漏りになる可能
性も高くなります。
シンプルが一番
屋根の形状は出来るだけシンプルである方が雨
漏りの可能性を下げることが出来ます。屋根の
形状がシンプルと言うことは平面形状も同様に
シンプルであると言うことになります。
屋根替え
話が逸れましたが、屋根替えに話を戻します。
この建物は元々、茅葺であった屋根の上から
茅を下ろさず、その上から鉄板を被せた、い
わゆる缶詰と呼ばれる状態になっている屋根
です。
ご予算の関係で屋根だけを葺き替える提案を
させていただきました。内部は屋根を支える
構造体が繰り返された積雪などの重みに堪え
兼ねて、折れてしまい、応急処置が施された
状態でした。天井裏に上がると屋根板も脆く、
危うく踏み抜きそうになりました。
一見、立派に見える梁も割と華奢で、余計な
荷重を載せるとたわみも大きくなりそうでし
た。そのため屋根架構は出来るだけ下部に柱
のある個所に屋根を支える束を置き、成立さ
せることを考えました。又屋根勾配も写真ほ
どきつくすると、屋根面に足場を設けないと
いけないため、屋根替え後の勾配は少し緩く
なっていますが、それでも6寸勾配(約31°)
もあります。
割と華奢
写真から、複雑な屋根組ですが、割と華奢な
梁サイズであることをお分かりいただけると
思います。
扠首組
屋根は扠首組(さすぐみ)と呼ぶ軒桁より上
の部分を置いてあるだけの構造なので、屋根
の解体は比較的楽なんです。
屋根の解体
そのため、一旦屋根を取り払った状態が上の
写真なのですが、見事にフラットな状態が生
まれています。
定点観測
同じ場所から屋根が出来上がって行く様子が
分かります。
余計な負担をかけない
屋根の形状が対象になっていないのは、先述
した下に柱が建つ位置に小屋束(屋根を支え
る部材)を立てたためで、そうすることで華
奢な梁に余計な負担を掛けずに済みます。何
も考えずに以前と同じように対称形の屋根に
してしまうと、長期目線で建物の寿命を縮め
ることになります。見た目こそ大きく変わり
ましたが、屋根の大きさは健在です。
リノベーションとは
リノベーションとは単に直すだけの行為では
なく、事前の調査を元に、建物の特徴を把握
し長期目線で建物のことをより良い状態にす
る行為です。