リノベの勘所 Narito Ashida リノベの勘所 Narito Ashida

リノベの勘所 第5話

耐震補強中の現場の様子

耐震補強は、どこまでやればいい?

古い家をリノベーションするとき、避けて通れない問題があります。

それが、「この家は、地震に対して大丈夫なのか?」ということです。

特に大きな地震を経験した地域では、このことを気にされる方も多いでしょう。

「せっかくリノベーションするなら、耐震補強もした方がいいですよね。」

これは、とても大切な考え方です。

ただ、ここで一つ難しい問題があります。

それは、「では、どこまで耐震補強すればいいのか?」ということです。

耐震補強は、やればやるほど良い、そう思われるかもしれません。

もちろん、安全性を高めることは重要です。

しかし、既存住宅のリノベーションでは、単純に「強くすればいい」という話ではありません。

建物の状態、間取り、予算、これから何年住むのか、そして、その家でどんな暮らしをしたいのか

それらを含めて考える必要があります。

「古い家だから危ない」とは限らない

前回の「家の健康診断」でも書きましたが、住宅は築年数だけで判断できません。

古い家だから危険、新しい家だから安心

そんな単純な話ではありません。

もちろん、建築された年代によって耐震基準が異なります。

特に1981年の建築基準法改正は、既存住宅の耐震性を考える上で一つの大きな目安になります。

ただし、同じ年代に建てられた住宅でも、建物の形状や施工状態、劣化状況によって状態は違います。

さらに、増築されている、間取りが変更されている、大きな開口部がある、屋根が重い、シロアリ被害がある
、柱や梁が劣化している、など、さまざまな条件によって耐震性は変わります。

だから、「築○年だから耐震補強が必要」

だけでは、本当の判断にはなりません。

まずは、その家の状態を知ること、そこから始まります。

耐震診断は「家の弱点」を知るためのもの

耐震診断というと、「この家は地震に強いのか、弱いのかを判定するもの」と思われがちです。

もちろん、それも重要な役割です。

しかし私は、それだけではないと思っています。

耐震診断をすることで、「この家のどこが弱いのか」を知ることができます。

例えば、この方向の壁が少ない、2階に比べて1階の壁配置が偏っている、大きな開口部がある、基礎に問題がある、など

建物の弱点が見えてくれば、どこを補強すれば効果的なのかを考えることができます。

つまり、闇雲に壁を増やすための診断ではなく、効率よく安全性を高めるための診断。

そう考えると、耐震診断の意味も分かりやすくなります。

耐震補強=壁を増やすこと、ではない

耐震補強と聞くと、「部屋の中に筋交いや壁をたくさん入れる」

というイメージを持つ方もいるかもしれません。

確かに、耐力壁を増やすことは重要な方法の一つです。

しかし、それだけではありません。

屋根を軽くする、壁の配置を見直す、接合部を補強する、基礎を補強する、劣化した部材を交換する、

床や屋根の剛性を確保する、建物全体として力が伝わるようにする、

このように、耐震改修にはさまざまに見直す部位が存在します。

そして重要なのは、「どこに、どのような補強を入れるか」です。

壁を増やせばいいからといって、家のあちこちに壁を追加すればいいわけではありません。

それは、むしろ暮らしに必要な場所を犠牲にしてしまう可能性もあります。

耐震性と暮らしやすさを両立させる

例えば、「この部屋を広いLDKにしたい」というリノベーションの要望があったとします。

ところが、その場所に耐震上重要な壁がある。

そこで、「耐震のために壁を残してください」と言うだけでは、設計者としては少し寂しい話です。

逆に、「壁を全部なくして大空間にしましょう」というのも安全性の裏付けが無く危険です。

そこで、「どうすれば、安全性を確保しながら、この暮らしを実現できるか?」を考えます。

例えば、別の位置に耐力壁を配置する、構造的な計画を見直す、

場合によっては、間取りそのものを少し変えるなど

耐震と間取りを別々に考えるのではなく、構造と暮らしを同時に設計する。

これがリノベーションの難しさであり、面白さでもあります。

どこまで耐震補強するかは、予算とも関係する

そして、現実的には予算の問題もあります。

耐震補強には費用がかかります。

さらに、断熱改修もしたい、水回りも新しくしたい、屋根も直したい、間取りも変えたい

当然、すべてを同時に行えば工事費は大きくなります。

だからこそ、「何を優先するのか」を決める必要があります。

私は、ここで大切なのは、「予算がないから耐震はやめる」という二択にしないことだと思っています。

建物の状態を確認した上で、「ここは必ずやる」、「ここはできればやる」、「ここは今回は見送る」

という優先順位をつける。

そして、将来的な改修の可能性も含めて計画する。

これも設計の仕事です。

断熱と耐震は、一緒に考える

前回、断熱について書きました。実は、耐震と断熱はリノベーションの中で非常に相性の良い工事です。

例えば、壁を解体するのであれば、そのタイミングで、

耐力壁をつくる、断熱材を入れる、気密について検討する、ということができます。

床を解体するのであれば、床下の状態を確認する、必要な補修をする、断熱する、床の剛性を確認する

ということもできます。

つまり、一つの工事をするために解体するなら、その機会を無駄にしない。

これがリノベーションでは非常に重要です。

「地震に強い家」だけをつくればいいのか?

ここで、少し立ち止まって考えてみます。住宅は、地震のためだけに存在しているわけではありません、毎日暮らす場所です。

朝起きる、ご飯を食べる、仕事をする、子どもが遊ぶ、家族で話す、庭を見る、眠る

そうした毎日の生活があります。

だから私は、耐震性だけを追い求めて、暮らしが窮屈になるようなリノベーションにはしたくありません。

もちろん、安全性は非常に重要です。

しかし、安全性、断熱性、使いやすさ、居心地、素材、コスト、そして、家族のこれから

それらを一緒に考えていく必要があります。

大切なのは「どこまでやるか」を決めること

耐震補強には、絶対的な一つの答えがあるわけではありません。

その家の状態によって違います、住む人によっても違います、予算によっても違います、これから何年住むかによっても違います

だからこそ、「どこまでやればいいですか?」という質問に対して、

「ここまでです」と簡単に答えることはできません。

まず建物を調べる、弱点を把握する、これからの暮らしを考える、その上で、必要な補強を考える

私は、それがリノベーションにおける耐震改修の基本だと考えています。

古い家を「弱い家」のまま終わらせない

古い住宅には、確かに耐震上の弱点がある場合があります。

だからといって、「古いから壊す」という結論だけが答えではありません。

そこにある柱や梁を活かしながら、必要なところを補強する、断熱性能を高める、設備を更新する、

暮らしに合わせて間取りを整える。

そうやって、「これまでの家」を「これからの家」に変えていく。

それがリノベーションの大きな役割だと思います。

家を残すということは、ただ古い建物を保存することではありません。

安全に、快適に、これからも使える状態にして、次の時間につないでいくこと。

そのために、耐震改修があります。

リノベの勘所

耐震補強は「どこまで壁を増やすか」ではない。
「この家を、これからどう使い続けるか」から考える。

耐震診断で家の弱点を知る、必要な場所を補強する

そして、断熱や間取り、設備の改修とも一緒に考える。

「耐震性」という一つの数字だけを追いかけるのではなく、

安全と暮らしやすさの両方をどう実現するか。

そこに、リノベーションの魅力があります。

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リノベの勘所 第4話

断熱改修及び窓改修の様子

断熱材を入れたからOK? ではありません

「この家、冬になると本当に寒いんです。」リノベーションの御相談では、そんな話をよく聞きます。

朝、布団から出るのがつらい、暖房をつけてもなかなか暖まらない、廊下に出ると急に寒い、トイレや脱衣室が寒くて、できるだけ行きたくない。

逆に夏になると、2階が暑くて、とても寝られない。

ということもあります。

そこで、「断熱材をしっかり入れれば、暖かい家になりますよね?」

と聞かれることがあります。

もちろん、断熱はとても重要です。

しかし、リノベーションで家を暖かくすることを考えるとき

「断熱材を入れたからOK」とはなりません

家の温熱環境は、もう少し複雑だからです。

そもそも、なぜ古い家は寒いのか?

昔の住宅では、現在ほど断熱性能が重視されていませんでした。

壁や天井に十分な断熱材が入っていないことは当然、窓が単板ガラスだったり、隙間風が入りやすかったり。

さらに、昔の住宅には「家全体を暖める」というより、

人がいる部屋を人がいる時間だけ暖める

部分間歇暖房」という考え方が殆どです。

居間にはこたつ、台所にはストーブ、寝室には電気毛布、そんな暮らしです。

そのため、

居間は暖かいけれど廊下は寒い、寝室は寒い、トイレも寒い、

という「家の中の温度差」が生まれます。

現代の暮らしでは、こうした温度差をできるだけ小さくすることが重要になっています。

断熱材だけを見てはいけない

断熱性能を高めようとすると、まず「どんな断熱材を使うか」に目が行きます。

グラスウールなのか、セルロースファイバーなのか、発泡系の断熱材なのか、もちろん、材料の選択は重要です。

しかし、それだけで住宅の温熱環境が決まるわけではありません。

例えば、壁に高性能な断熱材を入れても、窓から大量に熱が逃げていれば、家全体としての性能は十分に高まりません。

逆に、断熱材だけを厚くしても、隙間から空気が出入りしていれば、その効果を十分に発揮できません。

つまり、断熱材は「家を暖かくするための一つの部品」にすぎない。

ということです。

「窓」はリノベーションの大きなポイント

古い住宅を見ていて、特に気になるのが窓です。

昔の住宅では、現在の住宅と比べて断熱性能の低い窓が使われていることが殆どです。

窓は壁に比べると熱が出入りしやすい場所です。

冬には室内の熱が逃げていく、夏には外から熱が入ってくる。

そのため、断熱改修を考えるときには、

「壁に断熱材を入れる」だけでなく、「窓をどうするか」

を一緒に考える必要があります。

既存の窓を交換するのか、内窓を設置するのか、ガラスを変更するのか

場合によっては、窓の大きさや位置そのものを見直す。

こうした選択肢があります。

そして窓は、断熱性能だけではなく、

「どこから光を入れるか」、「どこから風を入れるか」、「庭をどう眺めるか」

という、暮らしや設計にも大きく関わります。

だからこそ、単純に「断熱性能の高い窓に交換する」だけではなく、

その窓を、これからの暮らしの中でどう使うのか

まで考える必要があります。

夏の暑さと冬の寒さは、つながっている

「冬の寒さ対策だから断熱をする。」

と思われがちですが、断熱は夏にも関係します。

夏の住宅では、外から入ってくる日射熱が大きな問題になります。

特に大きな窓から強い日差しが入れば、室内はどんどん暑くなります。

そのため、断熱する、窓の性能を高める

そして、そもそも熱を家の中に入れない「日射遮蔽」

という考え方も重要です。

庇を出す、外付けのブラインドや日除けを利用する、植栽で日射をコントロールする、

窓の向きや大きさを考える、こうした方法があります。

つまり、暑さ対策は「エアコンを強くする」だけではありません。

熱が入ってくる前に、できるだけ防ぐ。

これも建築の役割です。

「高性能エアコンを入れればいい」でもない

断熱改修の話をすると、「じゃあ、性能のいいエアコンを入れればいいのでは?」

と思うかもしれません。

もちろん、暖房・冷房設備は重要です。

しかし、断熱性能が低い家で、大きなエアコンを使って無理に暖めるという方法では、エネルギーを多く消費することになります。

反対に、建物の断熱性能を高め、熱が逃げにくい状態をつくれば、必要な暖冷房能力も変わってきます。

以前の記事でも触れたように、住宅の外皮性能を確認した上で暖冷房設備を考えることが大切です。

「大きなエアコンを入れる」のではなく、
「必要な暖冷房能力を小さくできる家にする」。

この発想が重要です。

リノベーションでは「どこまでやるか」が難しい

ここが新築とは違う、リノベーションの難しいところです。

新築なら、土地の条件を確認した上で、最初から断熱・気密・窓・設備を計画できます。

しかし、既存住宅にはすでに、柱があり、梁があり、床があり、壁があり、屋根があります。

そして、住みながら工事をすることもあります。

そのため、「全部壊して新しくする」

という方法を取らない限り、どこまで断熱改修するかは簡単ではありません。

例えば、

床はどうするのか?、壁はどこまで解体するのか?、天井はどうするのか?、既存の窓は残すのか?

新しい窓に交換するのか?

それに伴って外壁をどこまで触るのか。

こうしたことを一つずつ判断していく必要があります。

だからこそ、

「断熱性能を上げること」だけを目的にするのではなく、家全体のバランスを見る。

これがリノベーションでは大切になります。

断熱改修は「暮らしの改修」でもある

断熱性能が高くなると、単に「暖かい」というだけではありません。

冬に家の中を移動しやすくなる、脱衣室やトイレの寒さが和らぐ、

朝起きたときの寒さが軽減される、冷暖房の効き方が変わる、

部屋ごとの温度差が小さくなる。

つまり、断熱改修は、暮らし方そのものを変える可能性があります。

「冬でも家の中で薄着で過ごせるようになった」

という変化もあれば、

「今まで使っていなかった部屋を使えるようになった」

ということもあるでしょう。

断熱性能を数字で確認することも大切ですが、最終的には、その性能が

「暮らしの中でどう感じられるのか」

まで考えることが重要です。

リノベーションでは、断熱と耐震を一緒に考えたい

そして、古い住宅のリノベーションでは、もう一つ大切なことがあります。

それが耐震改修です。

壁を解体する、床をめくる、天井を撤去する

こうした工事をするのであれば、その機会に耐震性能についても検討できます。

断熱のために壁を開ける。

その壁を耐力壁として改修する、床を解体する、

その機会に床下の状態を確認する。

このように、一つの工事をきっかけに、別の問題も一緒に解決できることがあります。

だからリノベーションでは、

「断熱工事」「耐震工事」「設備工事」を別々に考えるのではなく、建物全体として考える。

ことが重要です。

暖かい家をつくることが目的ではない

ここまで断熱について書いてきましたが、私がリノベーションで目指したいのは、

単純に「暖かい家」をつくることではありません。

夏は暑くなりすぎず、冬は寒くなりすぎず、家の中の温度差ができるだけ小さく、

必要なときには自然の光や風も取り入れられる。

そんな、

「一年を通して暮らしやすい家」です。

そして、そのためには断熱材だけではなく、窓、日射、気密、気流、換気、暖冷房、間取り。

そして、その家が建っている場所。

これらを一緒に考える必要があります。

古い家だからこそ、できることがある

古い住宅のリノベーションでは、「性能が低いから、全部やり直さなければならない」

と考えがちです。

でも、そうとは限りません。その家には、その家なりの良さがあります。

深い軒、大きな窓、風の通り道、庭とのつながり、木の柱や梁、

昔の人が、その土地の気候や暮らしに合わせてつくった工夫。

それらを読み取りながら、現在の断熱・耐震・設備の考え方を組み合わせる。

そこに、古い家をリノベーションする面白さがあります。

古いものを全部捨てて、新しくするのではない。

残すものは残す、性能が不足しているところは補う、

そして、今の暮らしに合わせて整える。

それが、これからのリノベーションには必要なのではないでしょうか。

リノベの勘所

「断熱材を入れる」ことが目的ではない。
「その家で、これからどう快適に暮らすか」を考える。

壁、床、天井、窓。

そして、日射、気密、気流、換気、暖冷房。

一つひとつを別々に考えるのではなく、家全体を一つの環境として考える。

それが、古い家をこれからも長く使っていくための断熱リノベーションの勘所です。

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リノベの勘所 第3話

ヘルメットを被り紺の作業着を着た男性が住まいの外壁に計器をあてがっている。手元にはタブレットを持ち、後ろには計器を仕舞うケースが置かれている。

写真はイメージですが点検商法にはお気をつけ下さい

先ずは住まいの健康診断

リノベーションの相談を受けると、

「キッチンを新しくしたい」

「寒い家を暖かくしたい」

「子どもが独立したので間取りを変えたい」

といったご要望を伺います。

もちろん、それらはリノベーションを考える大切なきっかけです。

しかし、実際に工事を考え始める前に、もう一つ大切なことがあります。

それは、

今の家が、どんな状態なのかを知ることです。

人間であれば、体の調子が悪くなったときに病院へ行きます。

そして、必要に応じて検査を受け、原因を調べます。

原因が分からないまま、いきなり薬を飲んだり手術をしたりすることはありません。

住宅も同じです。

これから何十年も住み続けるためにリノベーションをするのであれば、まずは今の家の状態を知る必要があります。

私はこれを、「家の健康診断」だと考えています。

見た目だけでは、家の状態は分からない

古い家を見るとき、多くの人はまず目に見える部分を見ます。

壁が汚れている、床が傷んでいる、キッチンが古い、お風呂が寒い、外壁の色が褪せている

こうした部分は、比較的分かりやすいものです。

しかし、住宅には普段の生活では見えない部分がたくさんあります。

例えば、

・床下
・屋根裏
・壁の内部
・基礎
・柱や梁の接合部
・給排水管

などです。

そして、本当に重要な問題は、こうした見えない部分に隠れていることがあります。

表面はきれいに見えても、床下に湿気が溜まっているかもしれません。

天井にシミがなくても、屋根裏では雨漏りが進んでいるかもしれません。

壁を壊してみると、柱が傷んでいることもあります。

だからこそ、

「見た目がきれいだから大丈夫」とも、「古いからダメ」とも、簡単には判断できません。

まず確認したい「家の4つのポイント」

リノベーション前に確認したいことはいくつもありますが、大きく分けると次の5つです。

1.構造は大丈夫か

住宅にとって最も重要なのは、やはり構造です。

基礎はどのような状態なのか、柱や梁に大きな傷みはないか、床が大きく傾いていないか、シロアリの被害はないか、耐震性は十分なのか

リノベーションでは間取りを変更することがあります。

壁を取り払って広いLDKをつくりたい、という要望も多いでしょう。

しかし、その壁が住宅を支える重要な壁だった場合、単純に取り払うことはできません。

見た目だけを変える前に、

「この家が、どのような構造で成り立っているのか」

を知る必要があります。

2.雨漏りや湿気はないか

住宅の劣化原因として、特に注意したいのが水です。

屋根からの雨漏り、外壁からの雨水の侵入、床下の湿気、配管からの漏水

水は、少しずつ建物を傷めていきます。

しかも、すぐに大きな問題として現れるとは限りません。

長い時間をかけて木材を腐らせたり、シロアリ被害を引き起こしたりすることもあります。

リノベーションで内装をきれいにしても、その原因が残ったままでは意味がありません。

だから、「まず水を止める」ことが重要です。

家を長く使うためには、見た目をきれいにする前に、建物を傷める原因を取り除かなければなりません。

3.シロアリの被害はないか

木造住宅の場合、床下の状態も重要です。

普段は見ることのない場所ですが、床下には住宅の健康状態を知るための多くの情報があります。

土台や柱にシロアリ被害はないか、木材が腐っていないか、湿気が多くないか、給排水管から水漏れしていないか。

こうしたことなどを確認します。

特に古い住宅の場合、「見た目には問題がない」

と思っていても、床下を確認すると予想以上に傷みが進んでいることがあります。

逆に、「かなり古い家だから傷んでいるだろう」と思っていたのに、床下の状態が非常に良いこともあります。

だからこそ、築年数だけでは判断できません。

4.断熱性能はどうか

昔の住宅と現在の住宅では、断熱に対する考え方が大きく違います。

冬になると家の中が寒い、暖房をつけても部屋がなかなか暖まらない、足元が冷たい、廊下やトイレに行くと急に寒くなる、

夏は2階が暑くて眠れない

こうした問題を抱えている住宅も少なくありません。

リノベーションでは、「壁を新しくする」「床を張り替える」

といった工事が行われます。

しかし、せっかく壁や床を解体するのであれば、そのタイミングで断熱性能についても考えることができます。

内装をきれいにしてから、「やっぱり断熱工事をしたい」

となると、再び壁や床を解体しなければならないこともあります。

だからこそ、

見た目を変える工事と、性能を向上させる工事は、できるだけ一緒に考える。

これもリノベーションの重要な勘所です。

リノベーションは、工事を始める前が大切

リノベーションというと、「どんなキッチンにするか」「床材は何にするか」「壁の色はどうするか」

といった、楽しい話から始まりがちです。

もちろん、それも家づくりの楽しみの一つです。

しかし、本当に重要なのは、その前にあります。

この家は安全なのか、どこが傷んでいるのか、これから何を直す必要があるのか。

そして、何を残すことができるのか。

前回の記事でも、「古い家だから建て替える」

と簡単に決めないことの大切さについて書きました。

リノベーションも同じです。

まずは家を知る。

その上で、残すものを決める、直すところを決める、性能を高めるところを決める

そして最後に、

暮らしをどう変えていくのかを考える。

この順番が大切です。

人間も住宅も、早期発見が大切

住宅の傷みは、放置すればするほど大きな工事になることがあります。

小さな雨漏りが、やがて柱や梁を傷める。

床下の湿気が、木材の腐朽につながる。

小さな水漏れが、気がついたときには大きな被害になっている。

だから、

「リノベーションすることが決まってから調べる」

のではなく、

「リノベーションできるのかを判断するために調べる」

という考え方が必要だと思います。

人間が健康診断を受けるように、家も定期的に状態を確認する。

そうすることで、大きな問題になる前に手を打つことができます。

家の価値は、表面だけでは分からない

古い家を見たとき、「きれいか、汚いか」、「新しいか、古いか」

だけで判断してしまうと、その家の本当の価値を見失うことがあります。

大切なのは、その家が、今どんな状態なのか。

そして、これからどこまで性能を高めることができるのか。

見た目には古くても、構造がしっかりしている家があります。

一方で、見た目は比較的新しくても、雨漏りや劣化が進んでいる家もあります。

だからこそ、リノベーションの第一歩は、デザインを考えることでも、設備を選ぶことでもありません。

まず、その家を知ること。

これが、これから何十年も住み続けるためのリノベーションの出発点になるのではないでしょうか。

リノベの勘所

「直したい場所」より先に、
「傷んでいる場所」を知る。

そして、

「古いから壊す」のではなく、
「今の状態を知ってから、これからを考える」。

リノベーションは、工事が始まってからではなく、

住まいの健康診断から始まります。

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Narito Ashida Narito Ashida

10分前には通れた道が・・・

2014年の豪雨災害により被害を受けた村の山

昨夜は、私が住む丹波市でも夜遅くまで雷が鳴り響き、かなり激しい雨が降りました。

幸い、雨は一晩中降り続くことはなく、大きな災害も発生しませんでした。

しかし、激しい雷鳴を聞きながら、私は12年前のある夜のことを思い出していました。

2014年のことです。

その夜は、夜10時頃に眠りにつこうとした時には、すでに雨が降り始めていました。

やがて雷が鳴り始めました。

最初は「よく降るな」という程度だったと思います。

ところが、雨も雷もなかなか止みません。

いつまで経っても降り続く雨。

夜空を切り裂くように何度も鳴り響く雷。

あまりにも激しい雨と雷が続くので、次第に「この世の終わりではないか」と思うほどになり、ふと頭に浮かんだのが、旧約聖書に出てくる「ノアの箱舟」の話でした。

その当時、私は村の組長をしていました。

そして夜中の3時頃。

雷が鳴り響き、豪雨が降り続く中、各組の組長が呼び出されました。

指示されたのは、土嚢を積むこと。

真夜中の豪雨の中での作業です。

一通りの役目を終え、ようやく家に戻ろうと車に乗りました。

その時のことは、今でもはっきり覚えています。

家に向かう道は、普段から何度も通っている、何の変哲もない道です。

ところが、車を走らせていると、先ほどまで普通に通れた道路が冠水し始めていました。

「これは、このまま進んだら危ない」

そう思いました。

あと少し進んでしまえば、車が水につかって動かなくなるかもしれない。

そこで、いったんバックすることにしました。

しかし、外は依然として猛烈な雨。

ワイパーを動かしても前が見えにくい。

まして、バックですから後ろの状況はほとんど分かりません。

普段なら何でもない運転なのに、その時は恐ろしくて仕方がありませんでした。

幸い、何度も通っている慣れた道だったため、道路の真ん中あたりを慎重に走りながら、何とか冠水した場所を迂回することができました。

ただ、今思えば、かなり危険な状況だったと思います。

慣れた道だから大丈夫。

いつも通っている道だから大丈夫。

そんな感覚は、豪雨の前では簡単に崩れてしまいます。

道路の端には側溝があります。

普段なら何気なく見過ごしている側溝も、道路が冠水してしまえば、その位置すら分からなくなります。

もしタイヤを側溝に落としていたら、車は動けなくなっていたかもしれません。

そして夜が明けました。

今度は、別の場所で問題が起きていました。

狭い水路に流木が詰まっていたのです。

水の流れがせき止められ、その周辺の道路には、たちまち水があふれ始めました。

昨日まで何ともなかった場所が、一晩でまったく違う姿になっていました。

あの時ほど「死」を意識したことは、今でもほとんどありません。

だからこそ、昨夜の雷と豪雨を聞きながら、12年前のことを思い出したのだと思います。

災害というのは、テレビの中で起こるものではありません。

どこか遠くの地域で起こる特別な出来事でもありません。

普段歩いている道路。

いつも車で通っている道。

家のすぐ近くにある水路。

そして、毎日暮らしている自分の家。

そうした「いつもの風景」が、雨の降り方ひとつで、まったく違うものになることがあります。

建築の仕事をしていると、どうしても建物そのものに目が向きます。

耐震性はどうか。

断熱性能はどうか。

雨漏りはしないか。

どんな材料を使うか。

もちろん、これらは住宅を考えるうえで大切なことです。

しかし、災害について考える時には、建物だけを見ていてはいけないのだと思います。

その家は、どんな場所に建っているのか。

敷地の周囲には、どんな水路があるのか。

道路より敷地は高いのか低いのか。

大雨が降った時、水はどこへ流れていくのか。

そして、もし道路が冠水した時、家から安全に避難できるのか。

「災害に強い家」というと、丈夫な構造の家を思い浮かべるかもしれません。

もちろん、それも大切です。

しかし、本当に災害に強い住まいを考えるなら、建物だけでなく、敷地と周辺環境まで含めて考えることが必要なのではないでしょうか。

昨夜の豪雨は、幸い大きな被害にはなりませんでした。

けれども、あの2014年の夜を経験した私にとっては、改めて災害への備えを考えるきっかけになりました。

「まさか、ここまでは降らないだろう」

「この辺りは大丈夫だろう」

私たちは普段、そんなふうに考えながら暮らしています。

でも、災害は「まさか」と思っている時にやってきます。

そして、その時になって初めて、

「こんなところに水が流れてくるのか」

「ここが通れなくなるのか」

「ここにこんな水路があったのか」

と気づくことがあります。

だからこそ、何も起きていない今のうちに、一度、自分の住んでいる場所を見直してみる。

それだけでも、災害への備えの第一歩になるのではないでしょうか。

家をつくることは、単に建物をつくることではありません。

その土地で、これから何十年と暮らしていく場所をつくることです。

だから私は、建物だけでなく、その土地が持っている特徴や、周囲の環境にも目を向けながら、住まいを考えていきたいと思っています。

昨夜の雨が過ぎ去った今、そんなことを改めて考えています。

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Narito Ashida Narito Ashida

水害に遭った建物、先ず何をすべき?

2014年の豪雨災害で私が直接めくった床下の状況です。

先日、住宅医スクールのスキルアップ講習会を受講しました。

今回の講師は、信州大学の中谷岳史先生。

テーマは、

「自宅が浸水したらどうしたらいいか?」

水害発生後の応急処置から、建物の診断、そして復旧工事までを学ぶ講習でした。

先日は千葉で、そして今日は富山や石川で、水害は日本全国、どこで起こっておかしくはありません。

これまで私は、水害に遭った建物は、

「まず床板をめくって、床下を乾かすことが最優先」

だと思っていました。

そう考えていたのには理由があります。

2014年、福知山市や丹波市を中心に大きな水害が発生した際、私は水害に遭ったお客様の借家の復旧作業を手伝ったことがあります。

床上まで浸水した建物に入り、床下に入り込んだ泥水や汚泥を掻き出すため、まず床板をめくる作業を実際に行いました。

その経験から、

「水害=まず床をめくる」

という考えが、自分の中では当たり前になっていたのです。

ところが、今回の講習を受けて、その考え方は少し変わりました。

水害後、最初にすることは「床をめくる」ことではない

中谷先生のお話でまず印象に残ったのが、

水害直後は、床板をめくることよりも、濡れた家財の仕分けから始める

ということでした。

水害によって室内に入ってきた泥水には、泥や汚れだけでなく、さまざまな有機物や菌などが含まれています。

そして濡れた家財そのものが、室内を汚染する原因にもなります。

そのため、まずは濡れた家財を外へ運び出し、

「捨てるもの」
「残したいもの」

などに分ける。

さらに、屋外で置き場所を分けることで、室内への汚染の拡大を防ぎます。

私はこれまで、水害現場に入ると、

「とにかく床下を何とかしなければ」

という気持ちが先にありました。

しかし、よく考えてみれば、そのために床板を先にめくることで、汚染された床下の空気や泥などが室内に上がってくる可能性があります。

つまり、

良かれと思って始めた作業が、かえって室内の汚染を広げてしまう可能性がある。

これは今回の講習で得た、大きな気づきでした。

水害後に大切なのは「除去・清掃・乾燥」

水害からの復旧で重要なのは、何か特別な薬剤を使って消毒することよりも、まず原因となるものを取り除くことだそうです。

基本となる考え方は、

有機物の除去

泥や汚れなど、カビの栄養源となるものを物理的に取り除く。

徹底した清掃

洗浄することで、建物に付着した汚染物質をできるだけ取り除く。

速やかな乾燥

換気、送風、除湿などを組み合わせ、できるだけ早く湿気を下げる。

そして、

消毒はあくまでも補助的なもの。

有機物や湿気が残ったまま消毒しても、その効果は限定的です。

水害が起こると、建物の中には「水」「有機物」「酸素」が揃います。

これはカビなどが発生しやすい環境です。

だからこそ、水が引いた後は時間との勝負になります。

講習では、浸水から48時間を超えると、カビなどのアウトブレイクの危険性が高まるという話もありました。

「何を残すか、何を捨てるか」

それを考えている間にも、建物の中では汚染が進んでしまう。

水害後の対応は、単純に「濡れたものを乾かせばいい」という話ではないのだと、改めて感じました。

床下は「屋外」と考える

もう一つ印象に残ったのが、

床下は、あくまでも屋外として考える

という考え方です。

もちろん、床下は建物の一部です。

しかし、水害直後の床下には泥や汚染物質が入り込みます。

そこへ不用意に人が入り、作業をすることで、汚染物質を室内へ持ち込んでしまうことがあります。

そのため、床下に入る必要がある場合も、できるだけ最小限にする。

そして送風機などを使い、まず乾燥を進める。

これまでの自分の経験では、

「床下に入って泥を出す」

ことが水害復旧の第一歩でした。

しかし今回の講習では、

「まず触らない」という判断も、水害復旧の重要な選択肢になる

ということを学びました。

現場経験があるからこそ、こうした新しい知識を知った時に、その意味がよく分かります。

実は「水害に遭ってから」では遅いこともある

今回の講習を受けて、もう一つ思い出した建物があります。

以前、敷地の三方を水路に囲まれた土地に住宅を設計したことがありました。

その土地は、過去に大雨によって水路から水があふれ、敷地が浸水したことがある土地でした。

お客様もそのことを理解された上で土地を購入され、私に設計をご依頼くださいました。

当然ですが、設計段階から水害対策を考える必要があります。

そこで私は、住宅の基礎を通常より高くする「高基礎」を採用しました。

そして住宅が完成した後、実際に大雨が降り、水路の水があふれました。

敷地は再び水に浸かりました。

しかし、不幸中の幸いだったのは、

高基礎にしていたことで、床上浸水を免れ、床下浸水で済んだことです。

もちろん、床下浸水でも被害がなくなるわけではありません。

それでも、床上まで水が入るのと、床下で止まるのでは、その後の復旧に必要な労力も費用も大きく変わります。

水害が起こってから、

「どうやって復旧するか」

を考えることも大切です。

しかしそれ以上に、

「どうすれば被害そのものを小さくできるか」

を建物をつくる前に考えておくことも重要なのだと思います。

水害対策は「設備」ではなく「設計」から考える

洪水や豪雨という自然災害そのものを止めることは、私たちにはできません。

だからこそ建築では、

「水害が起こらないこと」

を前提にするのではなく、

「もし浸水したら、どこまで被害を抑えられるか」

という視点が必要なのだと思います。

敷地の高さはどうなのか。

周辺の水路はどうなっているのか。

過去に浸水したことはないのか。

床の高さをどう設定するのか。

基礎をどのようにするのか。

水が入った場合、どこまで被害を受けるのか。

そして、復旧しやすい構造や仕上げになっているのか。

こうしたことを設計の段階で考えておけば、万一の水害が起こったときにも、被害を小さくできる可能性があります。

今回の講習を受けて、私は改めて、

建築は「災害が起こらない家」をつくるだけではなく、「災害が起こった後に立ち直りやすい家」をつくることも大切なのだ

と感じました。

災害は、いつ起こるか分からない

2014年に水害現場で泥を掻き出していた時の私は、目の前の建物をどうやって元に戻すかで精一杯でした。

あれから時間が経ち、今回の講習で改めて水害について学びました。

経験したからこそ分かることがあります。

そして、経験したからこそ、後から学び直すことで見えてくることもあります。

「ここは床上まで水を入れないようにするにはどうしたらいいか」

「浸水してしまったとしても、復旧しやすくするにはどうすればいいか」

「そもそも、この土地で家を建てる場合に、どのようなリスクがあるのか」

家づくりでは、デザインや間取り、断熱性能だけでなく、こうした目には見えにくいリスクについても考えておく必要があります。

水害は、起こってから考えるのではなく、

起こる前に、どこまで備えられるか。

それもまた、建築設計の大切な仕事の一つなのだと思います。

芦田成人建築設計事務所では、土地の状況や周辺環境、過去の災害履歴なども確認しながら、その土地に合わせた住まいのつくり方を考えています。

「この土地は大雨のとき大丈夫なのだろうか?」

そんな不安がある場合も、土地を購入する前、あるいは家づくりを始める前に、一度ご相談ください。

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リノベの勘所 Narito Ashida リノベの勘所 Narito Ashida

リノベの勘所 第2話

建て替えかリノベか悩む夫婦

写真はイメージです

その家、本当に建て替えた方がいいですか?

「この家、もう古いので建て替えた方がいいですよね。」

住宅の相談を受けていると、そんな言葉を聞くことがあります。

確かに、長く住んできた家であれば、設備は古くなり、断熱性能も現在の住宅と比べれば十分ではないかもしれません。

壁や天井に傷みがあったり、間取りが今の暮らしに合わなくなっていたりすることもあります。

そうなると、「いっそのこと全部壊して、新しい家を建てた方がいい。」

そう考えるのも無理はありません。

でも、私はそこで一度立ち止まって考えます。

「本当に、この家は建て替えなければならないのだろうか?」

古い=建て替え、ではありません

築年数だけを見れば、確かに古い家です。

しかし、家の価値は築年数だけでは決まりません。

例えば、

・しっかりした柱や梁が残っている
・長い年月を経た木材に味わいがある
・庭と建物の関係が良い
・昔ながらの風通しの良い間取りになっている
・古い建具や左官壁が、その家らしい雰囲気をつくっている

そんな家もあります。

これらは、古いという理由だけで壊してしまうには、少しもったいないものです。

国土交通省も、既存住宅について
「いいものを作って、きちんと手入れして、長く使う」
方向への移行を重要な考え方として示しており、耐震・省エネなどの性能向上を含めた既存住宅の活用を進めています。

つまり、古い家だから価値がないのではありません。

「その家が今、どんな状態なのか」を調べてから判断することが大切なのです。

建て替えかリノベーションかは、
まず「家の健康状態」を見る

人間でも、年齢だけを聞いて健康状態を判断することはできません。

70歳だから体が悪いとは限らないし、40歳だから健康とも限りません。

住宅も同じです。

築年数だけでは、その家の状態は分かりません。

実際に建物を見て、

・基礎はどうなっているか
・柱や梁は傷んでいないか
・雨漏りはないか
・シロアリの被害はないか
・屋根や外壁の状態はどうか
・現在の耐震性はどうか
・断熱性能はどの程度なのか

などを確認する必要があります。

場合によっては、インスペクションや耐震診断などを利用することも有効です。

国土交通省も、既存住宅の流通やリフォームにおいて、インスペクション、住宅履歴、既存住宅の性能評価などを活用する仕組みを整備しています。

そして、もう一つ大切なこと

建物の状態を確認するだけでは、まだ答えは出ません。

もう一つ考えなければならないのが、

「この家で、これからどんな暮らしをしたいのか」

ということです。

例えば、

「家族が増えて部屋が足りない。」

「冬になると家の中が寒い。」

「台所が狭くて家事がしにくい。」

「親と一緒に暮らすことになった。」

「子どもが独立して、部屋が余っている。」

こうした問題があるなら、建て替えなくても解決できる可能性があります。

逆に、建物の状態や法的な条件、希望する暮らし方によっては、リノベーションより建て替えの方が合理的な場合もあります。

だから私は、

「リノベーションありき」でも「建て替えありき」でも考えません。

まず、その家と暮らしの両方を見るようにしています。

リノベーションは「古い家を新しくする」ことではない

ここで、前回の話にもつながります。

リノベーションというと、

「古いものを新しいものに交換すること」

と考えがちです。

古いキッチンを新しくする。

古い浴室を新しくする。

古い壁紙を張り替える。

古い床を新しくする。

もちろん、それもリノベーションです。

しかし、それだけなら、その家である必要はありません。

私はリノベーションをするとき、

「残すもの」と「変えるもの」を見つけること

から始めたいと考えています。

例えば、柱や梁は残す。

一方で、耐震性能は向上させる。

古い建具はできるだけ活かす。

一方で、断熱性能は現在の暮らしに合わせて改善する。

庭は残す。

その代わり、庭とのつながりが生まれるように窓や間取りを考え直す。

そんなふうに、

古いものを残すことと、新しい暮らしをつくることを両立させる。

そこにリノベーションの面白さがあります。

建て替えではなく、リノベーションだからできること

新築には、新築の良さがあります。

構造も設備もすべて新しくでき、現在の暮らしに合わせてゼロから計画できます。

一方、リノベーションには新築にはない魅力があります。

それは、

すでにそこにあるものを利用できること。

長い年月を経た柱。

手仕事の跡が残る壁。

古い建具。

庭。

周囲の風景。

その土地で積み重ねてきた時間。

こうしたものは、新築では新しくつくることができません。

だからこそ、私は古い家を見るとき、

「何が古いのか?」

だけではなく、

「何がこの家にしかないのか?」

を見るようにしています。

ただし、何でも残せばいいわけではありません

ここは誤解してほしくないところです。

「古い家を活かす」と言っても、すべてを昔のまま残す必要はありません。

安全性に問題があるなら、改善する。

断熱性能が不足しているなら、向上させる。

使いにくい設備は更新する。

暮らしに合わない間取りは見直す。

必要であれば、古い部分を取り除くこともあります。

大切なのは、

「残すこと」そのものを目的にしないこと。

その家にとって何を残す価値があるのか。

何を変えれば、これからの暮らしが良くなるのか。

その判断をすることです。

建て替えるかどうかは、
「古さ」ではなく「可能性」で考える

古い家を見て、

「もう古いからダメだ。」

と判断するのは簡単です。

でも、「この家には何が残っているだろう?」

「これを活かしたら、どんな暮らしができるだろう?」

と考えてみる。

すると、同じ家でも見え方が変わってきます。

もしかすると、建て替えなくてもいいかもしれません。

もしかすると、建て替えた方がいいかもしれません。

どちらが正解なのかは、家によって違います。

だからこそ、私は最初から答えを決め付けてしまわないことが大切だと思っています。

建て替えるか、リノベーションするか。

その答えを出す前に、

まずはその家をよく見る。

そして、その家でこれからどんな暮らしをしたいのかを考える。

そこから、本当のリノベーションが始まります。

リノベの勘所

「古いから建て替える」のではなく、
「残す価値があるから活かす」という選択肢もある。

建物の年齢ではなく、
その家の状態と、これからの暮らし。

その二つを見てから、建て替えるのか、リノベーションするのかを考えてみてはいかがでしょうか。

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Narito Ashida Narito Ashida

一度きりの真剣勝負。高校野球に学ぶ、後悔しない家づくり

写真はイメージです。

夏の甲子園も、いよいよ明日の決勝戦を残すのみとなりました。

私も約40年ほど前は白球を追っていた高校球児でしたのでこの時期、自然と甲子園の試合には目を奪われます。

本日行われた準決勝、智弁和歌山対横浜の一戦は、7対1で智弁和歌山が勝利。優勝候補の一角と目されていた横浜高校は、28年ぶりの決勝進出を目前にして姿を消しました。

先発した横浜のエース・織田投手は、最速157キロを誇り「令和の怪物」とも称される超高校級の右腕です。
前日までの試合でも圧倒的な投球を見せてきましたが、中1日での連投という厳しい条件のもと、無念のマウンド降板となりました。

どれだけ実力があっても、たった一試合、数球の巡り合わせやコンディションなどで結果が大きく変わってしまう。
そして負ければ、それで終わり。これが高校野球の厳しさです。

実は、この「一発勝負」という構造、家づくりにもよく似ています。

家づくりも、やり直しのきかない一発勝負

多くの方にとって、家づくりは人生で一度きりの大きな決断です。
何千万円という費用をかけ、何十年と暮らしていく場所を決める。
しかも、一度建ててしまえば、あるいはリフォームしてしまえば、簡単にはやり直しがききません。

「もう一度試合をやり直したい」と思っても叶わない高校野球の選手たちと同じように、家づくりに携わる私たちも、「一度きりの真剣勝負」という緊張感を常に持って向き合っています。だからこそ、事前の準備や、信頼できるパートナー選びが何よりも重要になってくるのです。

エース一人に頼らない。
チームとしての総合力が結果を分ける

今日の試合を振り返って印象的だったのは、横浜が織田投手というエースの好投に多くを託さざるを得なかった一方で、智弁和歌山は打線全体、投手陣全体の総合力で勝利をもぎ取ったという構図です。どれほど傑出した個人がいても、その一人が不調に陥った瞬間にチーム全体が揺らいでしまう。
逆に、様々な選手が持ち味を発揮できるチームは、一人の調子が悪い日でも他の誰かがカバーし、勝利をたぐり寄せることができます。

これは、家づくりのパートナー選びにもそのまま当てはまる話だと感じています。

「有名な建築家だから」「デザインが素敵だから」——もちろんそうした魅力も大切な要素です。
ですが、家づくりの現場で本当に問われるのは、設計力だけではありません。現地調査で建物や敷地の状態を的確に見極める力、施工段階での管理体制、そして完成後のアフターフォローまで、一貫して支えられる総合力があってこそ、想定外の事態にもしっかりと対応できます。

特に、リノベーションや古民家・空き家の再生では、この総合力がより一層試されます。
新築とは違い、実際に壁や床を開けてみないと分からない劣化や、図面には現れない構造上の癖が数多く潜んでいるからです。
そうした「見えなかった問題」に直面したときにこそ、設計・調査・施工・アフターケアが一つのチームとして機能しているかどうかが、結果を大きく左右します。

私たち芦田成人建築設計事務所では、設計だけで終わらない、現地調査から施工、そして竣工後のフォローまでを一貫して伴走できる体制づくりを大切にしています。
一人のエースに頼るのではなく、チーム全体で一つひとつのプロジェクトに向き合う。
それが、想定外の状況が起こりやすいリノベーションや古民家再生において、施主様に安心して任せていただくための土台だと考えています。

準備とチームで、悔いのない一発勝負を

試合後、涙を流しながら「この試合は絶対忘れない」と織田投手は語ったそうです。
もう一度やり直すことができない一発勝負だからこそ、そこに懸けてきた準備や積み重ねの重みが伝わってきます。

家づくりも同じです。やり直しのきかない大きな決断だからこそ、事前の準備を丁寧に重ね、そして一人のエースではなく信頼できるチームと共に歩んでいくことが、悔いのない結果につながります。

明日は、いよいよ決勝戦。優勝旗の行方とともに、高校球児たちの一発勝負の集大成を、私たちも見届けたいと思います。

現地調査から設計、施工、アフターフォローまで、チームで丁寧に伴走いたします。まずは無料相談から、お気軽にお問い合わせください。

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リノベの勘所 Narito Ashida リノベの勘所 Narito Ashida

リノベの勘所 第1話「何を変えるか」より「何を残すか」

リノベーションを考えるとき、「何を新しくしようか」と考えるのは当然です。

例えば、キッチンを新しくする、床を貼り替える、間取りを変えるなどと考えるかもしれません。

勿論、それもそうなのですが

でも、その前に一度立ち止まって、「この家にしかないものは何だろう?」と考えてみてください。

長い年月を経た柱かもしれません
古い建具かもしれません
当時の職人さんが拘って造った設えかもしれません

それらは、新しい材料に交換すれば手に入るものではありません。

リノベーションとは、古いものを新しくすることだけではありません。

その家が持っている価値を見つけ、それを残しながら、これからの暮らしに合わせていくこと。

私は、そこにリノベーションの面白さがあると思っています。

二間続きの和室は襖で仕切られ奥の部屋の突き当りには中心に床柱があり鴨居にはユニークな木材が使われています

リノベーション事例

この写真はリノベーションした部屋の事例です。

写真の奥に写る床の間の柱や鴨居と言うべきか?落とし掛けと言うべきか? 床板は元々この家で、この場所で使われていたものです。

今、このような床柱を使って床の間を設けようと思うと大工さんの手間もそこそこ、掛かります。

そして何といっても面白いのは枝の部分が中抜きになっている鴨居?

こんな材料、今では絶対に使わないと思うのですが、当時の施主の好みなのか、職人さんの遊び心なのか貴重な財産と思って、残しました。

その他の部分の壁が白いのは予算の関係で、拘り切れなかった部分です。

柱や敷居は当時のまま使っているため色つやが全然、異なりますが、この家の持っている価値が、このような部分にあると考えます。

リノベーションは「足し算」ではなく「編集作業」

新しい設備を足す

断熱材を足す

収納を足す

部屋を足す

もちろん必要なものはあります。

しかし、リノベーションの本質は、

何を足すかではなく、何を残し、何を取り除き、何をつなぎ直すか。

つまり、

「家をつくり直す」というより「家を編集する」こと

これが本当のリノベーションでは無いかと思っています。


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Narito Ashida Narito Ashida

設計事例集を模様替えしています

様々な設計事例を集めたシート

設計事例集

を模様替えしています

当事務所のウェブサイトの「設計事例集」を模様替えしています。

これまではタグ検索に対応出来ていませんでしたが、タグ検索が可能になりました。

例えば、「平屋」と言うタグをクリックすると平屋の建物だけが抽出されて表示されるようになったり、「新築」や「リノベーション」、或いは建築地別などの様々なタグ検索が出来るようになりましたので少し便利になったのではないか、と思います。

但し、ブラウザーにより、タグの文字が少し小さいかもしれませんので、ただいま改善に向けて努力しております。

宜しければ、生まれ変わった「設計事例集」をご覧ください。

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Narito Ashida Narito Ashida

夏の無料相談会開催中!

写真はイメージです

今年も暑い夏の日、皆様はどのようにお過ごしでしょうか?

芦田成人建築設計事務所では、この暑い夏、そしてこれから迎える寒い冬に向けて大相談会を開催しています。

相談は、無料で、どなたでもお問い合わせいただけます。会って直接でなくても構いません、オンラインでの無料相談を受け付けております。

例えば、お住まいの結露やカビが、どうにかならないか? 収納が不足していて家中が片付かない、ウチの家の耐震性は大丈夫かな?などお住まいに関することは勿論ですが

中古物件を買って、新たに事業を始めたいと思うのだけど、この物件本当に買って大丈夫なの?法的な手続きは必要ないの?など事業に関する相談まで

30分ほどの内容で、建物に関することなら何でも大丈夫です。

但し、間取り診断と建築確認申請だけをお願いしたいと言う内容は、お断りしておりますのでご容赦お願い致します。

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Narito Ashida Narito Ashida

監修、コメント

株式会社ベルテクノ様が運営する「and Reform」を当方が監修、コメントしています。

詳しくは、こちら からご覧ください。

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Narito Ashida Narito Ashida

日常の備えが重要

先日、熊本県で10年ぶりとなる大きな地震が発生しました。

被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

また、今なお避難生活を余儀なくされている方々が、一日も早く安心して日常を取り戻されることを願っております。

私自身、7年前に震源地に近い高千穂町で仕事をさせていただいたことがあり、今回の地震のニュースを見て、現地の方々のことがとても気になっています。

地震が発生すると、一時的に「自宅は大丈夫だろうか」「耐震補強をした方がいいのでは」と考える方が増えます。

しかし、時間が経つにつれて、その危機感は少しずつ薄れていくのも現実です。

実はこれが一番怖いことではないでしょうか。

日本は世界でも有数の地震大国です。

「次はいつ、どこで起こるか分からない。」

だからこそ、大きな地震が起きた"今だけ"ではなく、普段から住まいの安全について考えておくことが大切だと思います。

7月11日のブログでは、耐震診断や耐震改修の必要性について書きました。

しかし、いきなり耐震補強の話になると、「費用が掛かりそう」「本当に必要なのか分からない」と感じられる方も少なくありません。

私は、まず最初に行うべきことは、

「自分の家がどれくらいの耐震性能を持っているのかを知ること」

だと考えています。

診断を受けて初めて、

・補強が必要なのか

・どの程度の補強で済むのか

・今のままでも安心できるのか

という判断ができます。

つまり、耐震診断は工事をするためではなく、正しい判断をするための第一歩なのです。

兵庫県では、昭和56年(1981年)5月以前に着工されたことが証明できる住宅については、無料または低額で簡易耐震診断を受けられる制度があります。

対象となる住宅にお住まいの方は、この制度を活用しない手はありません。

また、対象外となる住宅であっても、当事務所では 簡易耐震診断を3万円(税別)で行っています。

「補強工事をするかどうか」ではなく、

まずは住まいの現状を知る。

そのことが、ご家族を守る第一歩になると考えています。

もう一つ、今日からでもできる地震対策があります。

それは寝室にある背の高い家具の固定です。

阪神・淡路大震災では、建物そのものではなく、倒れてきた家具の下敷きになり、多くの方が被害に遭われました。

特に就寝中は、とっさに避難することができません。

耐震改修には時間も費用も掛かりますが、家具の固定は比較的少ない費用で、すぐに始められる防災対策です。

「何から始めればいいか分からない。」

そう思われる方は、まず寝室を見渡してみてください。

それだけでも、住まいの安全性は少し高まります。

私の実家では背の高いタンスは全てホームセンターで購入した家具転倒防止用チェーンにてしっかりと下地のある壁面に固定しています。

地震は忘れた頃にやって来る。

昔から言われてきたこの言葉は、今も決して色褪せていません。

だからこそ、ニュースを見た今だけではなく、日常の中で住まいの安全を考える習慣を持っていただきたいと思います。

「私の家は大丈夫だろうか。」

その疑問を、そのままにしないことが、ご自身や大切なご家族の命を守ることにつながります。

住まいは、暮らしを支える場所であると同時に、災害時には命を守る器でもあります。

この機会に、ぜひ一度、ご自宅の耐震性について考えてみませんか。

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