全てに理由がある
この時期の栗農園からは非常に臭いにおいが漂ってきます。ご存じの方もいらっしゃると思いますが非常に生臭い匂いです。
今は栗の白い花が咲き横を通るとその様子が分かります。
先日、草刈りのために栗農園で作業をしていたのですが栗の木の下にはブーンと言う羽音とともに無数のコバエのような虫がホバリングしていました。
それを見て何故、栗がこんなにも臭いにおいを放つのかが理解出来ました。
虫を利用した受粉だなと結びついたのです。臭い匂いを放つことで虫を呼び寄せて受粉のお手伝いをさせているのだそうです。
只、臭いで済ませていただけでは分からなかった自然のシステム。物事には全て理由があることを今更ながらに一つ学びました。
建築においても全てのことに理由があります。
只、見た目が格好いいだけで決めている訳ではなく理由があって、そのサイズであったり、その寸法であったり、その商品であったりします。
そこを理解するか否かで出来上がりも違ってきます。
最近ではインスタグラムやピンタレストで格好の良さそうな家や部屋やインテリアを探し、保存しておくことも出来ますが、果たしてそれらを寄せ集めたからと言って本当に良い家になるか?と問われれば、私は疑問に思います。
言うなれば、そう言った寄せ集めの家は、全員が4番打者の野球チームと同じで、実際に機能しない可能性が高いと思います。
何故ならば、寄せ集めただけでは、そこに理由が無いと言うのが一番の問題点です。
実際に関東の某お金持ちプロ野球チームが昔、そのようなチーム編成をしたことがあります。
確か、そのシーズンの結果は、思わしくなかったような記憶があります。
野球では1番打者には1番打者の役割があり、2番打者にも、3番打者にも、それぞれの役割がありチームとして機能させることが重要です。
それそれぞれに違う理由でデザインされた家を寄せ集めた所で、多分うまくは機能しないでしょう。
メリハリをつけることが重要なのに、見せ場ばかりでは疲れる家にしかなりません。
だから、気に入った家を保存するのは良いけども、それをそのまま採用するのではなく、そのコンセプトを自邸の中で生かす場合に上手くマッチするのか否かを考えることが重要になると思います。
生命力
5月になっても葉の付かない枝だけの状態で、完全に枯れてしまったので処分しなければいけないと思っていた観葉植物のガジュマルですが、
先日ふと見ると枯れたはずの枝のあちらこちらに小さな緑が見えました。
「あれっ?」小さな新芽が出てきたのです。この寒かった冬にうっかりと防寒対策を怠ってしまったので、もう駄目だと思っていましたが、
植物の生命力には感心せずにはいられません。
同様に枯れてしまったシマトネリコにも栄養剤を与えていたのですが、残念ながらこちらは未だに反応がありません。
奇跡的に復活してくれることを願うばかりです。
この先、ガジュマルが青々とした状態にまで復活してくれることを願い、水遣りなどもしていきたいと思います。
庭木で植える木々にも、極たまに土地に根付かずに枯れてしまう物もあります。
土壌が合わなかったのか、はたまた水が足りなかったのか、理由は分かりませんが、植物と付き合うのは根気と観察力は必要かと思います。
庭に緑は必要ないと仰る方も時々、いらっしゃるのですが、例え木1本で良いのでやはり緑があると生活に潤いを与えてくれると思います。
新芽が芽吹いてきたガジュマル
城崎へ
5月も後半だと言うのに少し肌寒い日でした。地元の建築仲間と連れ立って城崎に建築探訪へ行ってきました。一番の目的は堀部安嗣さんが改修設計された旅館「泉翠」でのランチ。
宿泊者のための客室も改修されているそうですが、残念ながら、そちらの見学までは出来ませんでした。次回行くなら、宿泊して是非客室の方も見学したいと思います。
過去に城崎をじっくり観光で訪れた記憶はありませんが、近くの香住や出石などは何度か訪問しています。
どちらの感じとも違い、街の中心を流れる川の両側に並ぶ宿やお店を中心に多くの外国人観光客などで賑わっていました。
城崎は年月を経た建物が多く、現代のニーズに沿うように旅館などが有名建築家に依頼して改修や新築をするケースが増えているようです。
しかし、細い路地に沿って建てられた、それらの建物は取り壊して新築するには条件が厳しすぎるため、改修を選択する方が賢明なように思えました。
平日とあって、ランチ予約は我々だけだったのでしょうか?前半は我々だけが貸し切り状態で、他の方々に気を遣う必要もなく会話のボリュームも上がり気味でしたが、
すごく騒いでいる訳ではありません。
白い壁にボールト天井、低く抑えられたライティングでレセプションスペースで少し寛ぎ、やがて奥の客席に通されました。
他にお客さんが誰も居なかったので、最初は少し緊張しましたが、出されたお料理に舌鼓を打つ内に、やがて口も警戒になり、建物の雰囲気を楽しませていただきました。
奥にあった厨房で調理をされるのかと思いきや、客席からは見えない所で調理された地元の食材は、どれも美味しそうで、ご飯とみそ汁は、お代わりOKとのことで、最後にはお腹を満たすことができました。
お腹を満たした後は、再び城崎の街を奥に向かって探訪です。
キラキラ輝く
暫く時間が空きましたが、生きております(笑
週末栗農園の話題も久しぶりですが、現在は栗の花が咲き私は恐らく栗の花粉症に悩まされながら、月に1度の草刈りをしております。
先日、某企業さんが栗を買いますよと言うことで営業さんがお見えになりました。
丹波ブランドの栗で一儲けを企んでおられるのかな?と思いながら話を聞いていましたが、
多分、栗を加工して販売する、いわゆる六次産業化までやることでコストメリットが増えるのではないかと推測しています。
栗の傍らで、今年から家庭菜園も手探りでやっておりまして、ナス、キュウリ、トマト、シシトウ、サツマイモなどの野菜を植えてみました。
既にナスは数本収穫しましたが、これからが本番の夏野菜は未だ青く色づき始めた所で、特にミニトマトは小さな実が
キラキラと輝いてとても綺麗に見えます。
これらの夏野菜が食べ頃になると赤く色づき、とても美味しそうに見えるのですが、収穫の頃合いを見計らって
空から飛来する野鳥に先を越され、折角育てた野菜が奪われてしまう被害に備えるため、現在は野鳥被害防止のための
柵を製作中で植えた野菜の周りに杭を打ち、ネットを張るための下地作りを進めております。
実が熟す前に何とか完成させないといけません。
広い洗面脱衣スペースは清潔感でまとめる
アンダーカウンター型の洗面化粧台
オーバーカウンター型、ベッセル型と来て最後はアンダーカウンター型の洗面台の紹介です。
アンダーカウンター型はカウンターの底にボールが取りつく形式で継ぎ目が無く一体感のあるように見えるのが特徴です。
ボールの縁の盛り上がりが無いためカウンターの上に落ちた水もすんなりとボールに戻すことができるためメンテナンス性に優れています。
一方で取り付け上の制約がありカウンターの縁からの空き寸法を一定程度設ける必要があるため、小さなカウンターには向きません。
写真は北東面に設けた高窓です。広めの洗面脱衣スペースで、人が2人同時に洗面台を使えるようにして欲しいと言うリクエストでした。
朝のこのスペースは毎日、身支度を整えるために混雑します。洗面、歯磨き、お化粧、髪の毛のセットなど忙しいご家庭では一人に独占されてしまうと困るスペースでもあり、
少し広めに確保しています。
収納部分は引き出しを増やせば、未だ未だ増量出来ますが、各ご家庭のスタイルで引出しでなく既製品のバスケット等で対応される場合もあります。
今回はカウンター下に物を入れたり椅子を入れたり出来るように大きく空けています。
そして毎回悩ましいのが洗濯機の排水口をどこに設けるか?と言う問題です。
洗濯機パンを使えば、パン自体に排水口が設けられているので大きな問題はありませんが、パンに埃が溜まって汚くなったり、パンも割と面積が必要になるため当事務所では余り洗濯機パンを設けることをしていません。と言うことで床に排水口を設けるのですが、排水口の大きさも結構あります、又大引きなど床下の構造体との干渉も避けないといけないなど考えることは結構あります。
洗濯機を浮かせるブロックがあり、そのような物を使えば排水口の位置を洗濯機の下に設けることも出来ます。
但し、異常があった時に洗濯機を動かしたりしないといけないこともあり、極力洗濯機の真下の排水口を避けたい
そうすると場所に困ることも多いのです。
今回は洗面脱衣スペースが広めでしたが、排水口を設けたい位置の真下には大引きが居たため、既製品では無く造り付けのカウンターの良さを生かしました。
写真の洗面カウンターの脚の下の方に穴が見えますが、この穴に排水ホースを通し洗面カウンターの下に排水するようにしています。
「見せる」だけではなく使い易さから考えた洗面台
ベッセルタイプの洗面台。
洗面化粧台の選択肢は既製品だけではなく造作する洗面台もあります。
今回のシリースでは、そのような造作した洗面スペースも合わせて紹介しています。
毎日使う場所だからこそ、「どんな見た目にするか」だけでなく、「どう使うか」「どう維持するか」が大切だと感じています。
今回ご紹介するのは、新築住宅の洗面脱衣スペースです。
写真の洗面器は、いわゆる“ベッセルタイプ”と呼ばれるもので
カウンターの上に洗面器を載せる形式で、ホテルライクな雰囲気をつくりやすいのが特徴です。
このタイプの良いところは、まずカウンター面を広く使えること。
洗顔用品やドライヤーを置いたり、ちょっとした家事に使ったりと、実際の暮らしの中で意外と便利です。
また、洗面器とは別にカウンター材を選べるため、空間全体の雰囲気に合わせた素材選びができるのも魅力です。
今回はメンテナンス性を考えて、木の質感と相性の良い、やわらかな色合いのメラミン素材でまとめています。
一方で、ベッセルタイプには注意点もあります。
洗面器とカウンターの取り合い部分は、どうしても汚れが溜まりやすくなります。
特に洗面器の周囲に余裕が無いと掃除がしづらく、水垢が残りやすいことも。
そのため今回は、洗面器まわりに適度な余白を確保しながら、水が跳ねやすい範囲の壁面にはタイルを施工しています。
見た目のアクセントでもありますが、実際にはメンテナンス性を考えて採用した部分でもあります。
また、この洗面脱衣室は建物の北側に位置しています。
一般的には「北側=暗い」という印象を持たれがちですが、北側の光は一日を通して明るさの変化が比較的少なく、実はとても安定した光です。
今回は高窓を設けることで、その安定した自然光を取り込みながら、道路側からの視線も遮る計画としました。
明るさを確保しながら、プライバシーも守る。
窓の高さひとつでも、空間の快適性はかなり変わってきます。
さらに、三面鏡の内部は収納になっており、日用品をしっかり納められる容量を確保しています。
洗面空間は生活感が出やすい場所ですが、「隠せる収納」があるだけで空間の印象はかなり整います。
洗面台は単体で考えるのではなく、
・どこに配置するか
・どんな光を取り込むか
・掃除しやすいか
・収納は十分か
・素材がどう経年変化していくか
そういった積み重ねの中で、使いやすい空間になっていくのだと思います。
毎日必ず使う場所だからこそ、少し丁寧に考える価値のあるスペースです。
寒かったあのスペースが長居できる場に
リノベーションしたお住まいの洗面脱衣スペース
写真は、リノベーションしたお住まいの洗面脱衣スペースです。
洗面台を計画する際、意外と見落とされがちですが、使い勝手や清掃性に大きく影響するのが「ボールの種類」です。
大きく分けると、洗面ボールは主に3つのタイプに分類されます。
・ベッセル型(置き型)
・アンダーカウンター型(天板下付け)
・オーバーカウンター型(今回採用)
今回の洗面台は「オーバーカウンタータイプ」です。
カウンターに開けた穴に上からボールを落とし込み、縁で引っかけるように納める構造です。
この形式のメリットは、カウンターとボールの取り合いがシンプルで、隙間に汚れが溜まりにくい点。
また、比較的自由に深さを確保できるため、水ハネの軽減にも寄与します。
一方で、ボールの縁がわずかにカウンターより立ち上がるため、その部分に石鹸カスや汚れが残りやすいという側面もあります。
見た目とメンテナンス性のバランスをどう取るか、このあたりが設計時の判断ポイントになります。
この空間で特徴的なのは、洗面台単体ではなく「空間全体の構成」です。
天井には木刷り板(塗り壁下地に使う板)を張り、端部にゆるやかなRをつけています。
このRの終端は壁にぴったりと付けず、あえてスリットを設け、そこに間接照明を仕込んでいます。
このディテールにはいくつか理由があります。
ひとつは、安全性。
人が手を伸ばして触れる高さではないため、R形状でもメンテナンスや使用上の問題が出にくい位置に限定しています。
もうひとつは、空間のスケール感の操作。
コンパクトになりがちな洗面脱衣室に、やわらかな変化と奥行きを与えるための仕掛けです。
直線だけで構成された空間に比べ、わずかな曲面が入ることで、視覚的な圧迫感が軽減されます。
また、黒い物干しバーを設けているのも、この空間の特徴です。
夜間に室内干しをされるとのことでしたが、
冬場でも朝にはしっかり乾いているそうです。
これは単に設備の問題ではなく、
・施した断熱対策
・空間のボリューム
・素材(木の調湿性)
・空気の流れ
といった複合的な要素が効いています。
設計としては「干せる場所をつくる」だけでなく、
「乾く環境を整える」ことまで踏み込めるかが重要です。
足元にはコルクタイルを採用しています。
水に強く、適度な弾力があるため、
素足で立ったときの冷たさや硬さを感じにくい素材です。
当事務所では水回りの足元にはコルクタイルの採用率が高く、好評です。
洗面脱衣室はどうしても機能優先になりがちですが、
こうした足触りの快適さが、日々の小さなストレスを確実に減らしてくれます。
洗面台は単体のプロダクトとして選ぶこともできますが、
本来は「空間の中でどう機能するか」を含めて設計するものです。
ボールの種類、天板との関係、光の入り方、素材の選び方。
それらが重なったときに、はじめて“使いやすさ”と“居心地”が両立します。
今回のように、ひとつひとつは小さな工夫でも、
積み重ねることで空間の質は大きく変わっていきます。
紙と布と言う選択
下駄箱の面材は和紙張りとしています
これまで下駄箱の天板や面材として、無垢材やシナ・ラワン合板を使った事例をご紹介してきました。
いわば「木をどう使うか」というお話です。
今回は少し視点を変えて、木以外の素材について触れてみたいと思います。
下駄箱の扉というと、「木でつくるもの」というイメージを持たれる方が多いかもしれません。
もちろんそれも一つの正解ですが、実は扉に求められる性能は、木でなくても十分に満たすことができます。
例えば、和紙。
紙と聞くと少し頼りない印象があるかもしれませんが、和紙は繊維が絡み合っていて、しっかりとした強度があります。
それでいて、光をやわらかく受け止める質感や、時間とともに少しずつ変化していく風合いは、木とはまた違った魅力です。
そして、紙はもともと木からつくられています。
そう考えると、木と和紙の組み合わせは、まったく別の素材というよりも、どこかつながりのある関係とも言えます。
下駄箱の面材をファブリックで仕上げた例、繊維独特の微妙な色の出方が美しい
もうひとつ、ファブリック(布)を使うという選択もあります。
布は触れたときにやわらかく、冷たさを感じにくい素材です。
毎日使う下駄箱だからこそ、こうしたちょっとした感触の違いが心地よさにつながります。
また、色や織り方によって表情を変えられるのも、布ならではの特徴です。
空間に少しだけやさしい雰囲気を加えてくれます。
木と紙、木と布。
一見すると違う素材ですが、どちらも自然から生まれたものです。
そのため、組み合わせたときにもどこか無理がなく、自然に空間になじんでいきます。
木の家だからといって、すべてを木で揃える必要はありません。
むしろ、こうした異なる素材を少し取り入れることで、木の良さがより引き立つこともあります。
素材選びは「何を使うか」だけでなく、「どう組み合わせるか」。
下駄箱のような身近な部分にも、その工夫を少し取り入れてみると、暮らしの中で感じる心地よさが変わってくるかもしれません。
木を”面”で使う選択
前回は、無垢板の下駄箱天板について書きました。
木そのものの表情や存在感を、そのまま暮らしの中に取り込むような使い方です。
一方で今回の玄関収納では、同じ“木”でも少し違う扱い方をしています。
シナベニヤやラワンベニヤといった素材を、木としてではなく「面」として扱う、という考え方です。
なぜ“面”として扱うのか
シナベニヤやラワンベニヤは、無垢材に比べて木目の主張が穏やかです。
そのため、一枚の板として見せるよりも、壁の延長のように連続した「面」として使う方が空間に馴染みます。
今回の玄関でも、収納扉を壁と一体化させることで、
玄関全体の印象をすっきりと整えることを意図しています。
特に玄関のように視覚情報が多くなりやすい場所では、
「見せる木」と「消す木」を使い分けることが重要になります。
素材ごとの特徴と使い分け
・シナベニヤ
木目が非常におとなしく、均質でクセが少ない素材です。
そのため、空間のノイズにならず、建築の輪郭を整える役割に向いています。
塗装の乗りも良く、設計意図をコントロールしやすいのも利点です。
・ラワンベニヤ
一方でラワンは、時間とともに色が深まり、味わいが増していく素材です。
新品の時はやや素朴ですが、経年変化によって空間に厚みが出てきます。
「主張しすぎないが、無機質にもならない」
そのちょうど良い中間に位置している素材と言えます。
メリットとデメリット
メリット
・大判で使えるため、面としての連続性が出せる
・コストバランスが良い
・空間全体を整理しやすい(設計的にコントロールしやすい)
デメリット
・無垢材のような強い素材感は出にくい
・エッジや小口の納まりに配慮が必要
・傷や汚れの見え方は仕上げに依存する
結びに
無垢材は、素材の力を借りて空間をつくる材料です。
一方で、シナベニヤやラワンベニヤは、空間を整えるための材料とも言えます。
どちらが良い悪いではなく、
「どこで主張させ、どこで抑えるか」というバランスの問題です。
玄関のように家の印象を決める場所では、
こうした素材の使い分けが、空間の質に大きく影響してきます。
木を使えば良い空間になるわけではありません。
むしろ、木を“どう見せないか”まで考えて初めて、空間は整います。
玄関に入った瞬間の、あの感じ
大きな屋根に守られて 玄関ホール
陽だまりで繋ぎました 玄関ホール
回って抜けて多動線の家 玄関ホール
玄関に入った瞬間、
「なんだか落ち着くな」と感じる家があります。
広いとか、新しいとか、そういう分かりやすい理由ではなくて、もっと感覚的なもの。
今回の写真の住まいも、そんな空気を持っています。
その理由のひとつが、下駄箱の天板に使った無垢の木です。
数枚の板を剥ぎ合わせて、大きな天板として仕上げています。
よく見ると、木目も色も少しずつ違っていて、均一ではありません。
でも、その“ばらつき”があるからこそ、
光が当たったときの表情に深みが出て、空間にやわらかさが生まれます。
玄関は、外から帰ってきて最初に触れる場所。
鍵や荷物を置いたり、ふと手をついたり。
そんな日常の何気ない動作の中で、
自然と木の質感に触れることになります。
最近は、こういった天板にも集成材を使うことが増えています。
寸法が安定していて、扱いやすい、とても合理的な素材です。
ただ、こうして無垢の木を使ってみると、
少しだけ“時間の流れ方”が違うように感じることがあります。
使っていくうちに少し色が変わったり、
小さな傷がついたり。
でもそれも含めて、暮らしに馴染んでいく。
玄関という場所に、そうした変化を受け止める余白があると、
家に帰る時間が、少しだけ豊かになる気がします。
無垢が良い、集成材が悪い、という話ではありません。
ただ、どこにどんな素材を使うかで、
暮らしの感じ方は変わるのだと思います。
玄関の一枚の板が、
その家の印象を静かに決めているのかもしれません。
台所で焦った!
私は普段から台所に立つ機会もあるのですが
昨日、うかつに火災報知器を鳴らしてしまいました
熱したフライパンに水を入れたことで、大量の蒸気が発生し、報知器が反応したようです
一般的に台所に設置されるのは熱感知式です
煙ではなく“温度の変化”を拾う装置です
つまり今回の作動は誤作動ではなく、設計通りの挙動です
それでも一瞬、身体は反応します
音に驚き、「何が起きたか」を確認しようとする
ただ、その次の判断は比較的冷静でした
それは、仕組みを理解していたからです
住宅設備の多くは、「知らなくても成立する」ように設計されています
それは間違いなく重要なことです
ただ一方で、「理解されない前提」で作られた環境は、トラブル時に人を不安にさせます
何が起きているのか分からない
正しい挙動なのか異常なのか判断できない
結果として、必要以上に焦る
今回のように、たとえ小さな出来事でも、その差ははっきりと現れます
建築において“性能”は重要です
しかし同時に、“理解可能性”も設計対象であるべきだと考えています
どう使われるかだけでなく、どう理解されるか
設備や空間の振る舞いに対して、住まい手が一定の解像度を持てること
それは安心の質に直結します
家はブラックボックスである必要はありません
むしろ、少しだけ中身が見えるくらいの方がいい
今回の警報音は、そのことを改めて教えてくれました
そして同時に、設計者としては
「ただ動くだけの家」ではなく、
「理解されながら使われる家」をつくる必要があると感じています
芽吹きに教わる住まいの時間
芽吹き始めた栗の木々
マルチの下から顔を出したジャガイモの芽
週末、栗農園の草刈りをしました。
暖かくなってくると、雑草は驚くほどの勢いで伸びてきます。
ついこの間までは静かだった景色が、一気に動き出したような感覚です。
暫く作業を続けた後、草を刈る手を止め、ふと顔を上げると
冬の間に剪定した木々の枝先から、新しい芽が膨らみ始めているのが見えました。
あの寒い時期をじっと耐えていた木々が、確実に次の準備をしていたのだと思うと、少し背筋が伸びる思いがします。
また、昨年から始めたジャガイモ栽培も、マルチの下でしっかりと芽を伸ばしていました。
マルチを破ってやると、もやしのように白く伸びた芽が、ようやく外の世界に顔を出します。
光に触れた途端、その表情が変わるのが分かります。
植物は、ただ放っておいても育ちます。
けれど、どう育つかは、人の手のかけ方で大きく変わる。
剪定も、草刈りも、ほんの少しの介入ですが、その積み重ねが姿をつくっていきます。
この感覚は、住まいづくりにもよく似ています。
家は完成した瞬間が終わりではなく、そこから時間が流れ始めます。
暮らしの中で手をかけられ、使われ、少しずつ変化していく。
設計という仕事は、形を整えること以上に、
その先の時間の流れをどうつくるかを考えることなのかもしれません。
これからは、植物にとっても、人にとっても動きやすい季節になります。
手をかけたものが育っていく様子を見守ること。
その積み重ねこそが、豊かな暮らしなのだと感じています。