兵庫、京都、大阪で誠実に丁寧に木の家をつくる芦田成人建築設計事務所
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兵庫県丹波市を拠点に誠実に、これからの木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所 芦田成人のブログです。

つかみ

先日そして今朝の新聞広告をみてふと目に留まった物。

「つかみ」の話しです。

つかみとは人の気持ちを捉える話題や言葉の事です。

私たちが時折開く新築住宅見学会の現場で受ける質問には、住宅の値段の話がしばしば登場します。

私たちは何気に応えてしまう事の無いように注意しています。その家がいくらで出来ているかと言った事は住まい手の個人情報でもあり、簡単にそのままの金額はお教えすることは控えさせていただいていると言う方が正しいのですが、あくまでもザクッとした坪単価でお応えする事はあります。

でもその際の坪単価って本当の単価であって、いわゆる、「つかみ」の単価ではありません。

「つかみ」と申し上げていますのはいわゆる本体単価などと書かれているあれです。

じゃあ、その本体って一体何が入っていて何が入ってないかご存知ですか?

ここで登場するのが、その目に留まった広告です。

以下が抜粋です。

※この坪単価は施行面積115.71㎡(35坪)以上の本体工事価格となります。本体工事価格は施行面積を基に算出しています。施行面積は延べ床、ポーチ、バルコニー、テラス、内部吹抜け、ポーチ階段、外部ふかし壁を含みます。地盤調査(調査結果により地盤補強工事が発生する場合があります)、門塀工事、屋外電気配線、屋外給排水工事、下水道接続工事、雨水排水工事、家具、電化製品、その他諸費用等は含まれていません。

・・・以下省略

つまり、この坪単価では家と言う箱は出来てもそこでは生活は出来ません。若しくはこの坪単価はあり得ません。と言うようにも捉える事が出来ると思います。

最も、上記のような但し書きが書かれているのは分らないでもないのです。

敷地やその周囲の電気、給排水と言ったインフラがどの程度整備されているか、地盤の強度どれ位あるのか?などは敷地毎によって条件も違いますし、読めない部分でもありますので。

 

又上記但し書きには少し難しい専門用語も登場していますので少し解説を

延べ床(面積)・・・建築基準法で謳われる各階の床面積の和と御考え下さい。

施行面積・・・上記延べ床面積に加えて、例えば吹き抜けがある場合などは、吹き抜け部分の床は無いけどもその部分の壁や天井は工事をしないといけませんね。そのように述べ床面積には勘定されないけども、実際は工事をしないといけない部分を言い、ポーチやバルコニー、テラスなどもの面積も含まれます。

ふかし・・・デザイン的な要素としたり、なんらかの納まりの加減で壁の一部分などを膨らませる、若しくは肉付けをする事を「ふかす」と言います。

で、話を元に戻しますが

この「つかみ」単価を見ると随分と安いなあ~と言う印象を受けますが、本体価格と言う言い方もやや反則のような気もします。

 

じゃあそのやり方で、自社物件を坪単価表示して見るとどうなるのか、モデルケースを挙げてシミュレーションしてみます。実際に存在するケースではありませんのであしからず。

仮に、施行床坪35坪、総施行費(工務店さんと住まい手との間で交わされる工事請負金額)2400万円(消費税込み)と言ったケースでのシミュレーションです。

このまま坪単価を割り出すと 約 68.5万円/坪当り と言う結果が出ます。

しかし、上記の広告には含まれていないであろうけども、自社ではほぼ標準的に最初から装備しているエアコン、カーテン若しくはブラインド類、照明器具、外構、地盤調査、そして上記の屋外電気配線、屋外給排水、下水道接続工事、雨水排水工事などを総工事費用の合計約200万円程度を総工事費用から差し引くと 計2200万円。それを35坪で割ってみると

約 62.8万円/坪当たり と言う事になりその差 約5.7万円/坪当たり の差になりました。

そこに諸費用なども差し引くと 坪単価はもっと下がっていくことになります。この諸費用も何を表しているのか曖昧ですね。

つまり何を申し上げようとしているかと言いますと、坪単価はあくまでも結果論であってそこに何が含まれていて何が含まれていないかを良く判断しておかないと、耳障りのいい「つかみ」にのって結果、そのつかみの値段では出来ない事になりますよと言った事なのですが

 

誤解の無いように申し上げておきますが、ローコスト系が悪いと申し上げている訳ではありません。

只、建築業界の商品(この場合は住宅を差しますが)の金額の表示のあり方に問題があるのではないかと言う事、それから住まい手の方には、そう言った「つかみ」だけに乗っかるのではなく良く内容を判断していただく必要があるという事を言いたかっただけなのです。

今回はお盆特別編と言う事で久々に長々と書き連ねてみました。

最後までご一読頂き有難う御座いました。