Narito Ashida Narito Ashida

寒かったあのスペースが長居できる場に

リノベーションしたお住まいの洗面脱衣スペース

写真は、リノベーションしたお住まいの洗面脱衣スペースです。

洗面台を計画する際、意外と見落とされがちですが、使い勝手や清掃性に大きく影響するのが「ボールの種類」です。
大きく分けると、洗面ボールは主に3つのタイプに分類されます。

・ベッセル型(置き型)
・アンダーカウンター型(天板下付け)
・オーバーカウンター型(今回採用)

今回の洗面台は「オーバーカウンタータイプ」です。
カウンターに開けた穴に上からボールを落とし込み、縁で引っかけるように納める構造です。

この形式のメリットは、カウンターとボールの取り合いがシンプルで、隙間に汚れが溜まりにくい点。
また、比較的自由に深さを確保できるため、水ハネの軽減にも寄与します。

一方で、ボールの縁がわずかにカウンターより立ち上がるため、その部分に石鹸カスや汚れが残りやすいという側面もあります。
見た目とメンテナンス性のバランスをどう取るか、このあたりが設計時の判断ポイントになります。

この空間で特徴的なのは、洗面台単体ではなく「空間全体の構成」です。


天井には木刷り板(塗り壁下地に使う板)を張り、端部にゆるやかなRをつけています。
このRの終端は壁にぴったりと付けず、あえてスリットを設け、そこに間接照明を仕込んでいます。

このディテールにはいくつか理由があります。

ひとつは、安全性。
人が手を伸ばして触れる高さではないため、R形状でもメンテナンスや使用上の問題が出にくい位置に限定しています。

もうひとつは、空間のスケール感の操作。
コンパクトになりがちな洗面脱衣室に、やわらかな変化と奥行きを与えるための仕掛けです。

直線だけで構成された空間に比べ、わずかな曲面が入ることで、視覚的な圧迫感が軽減されます。


また、黒い物干しバーを設けているのも、この空間の特徴です。

夜間に室内干しをされるとのことでしたが、
冬場でも朝にはしっかり乾いているそうです。

これは単に設備の問題ではなく、
・施した断熱対策
・空間のボリューム
・素材(木の調湿性)
・空気の流れ
といった複合的な要素が効いています。

設計としては「干せる場所をつくる」だけでなく、
「乾く環境を整える」ことまで踏み込めるかが重要です。


足元にはコルクタイルを採用しています。

水に強く、適度な弾力があるため、
素足で立ったときの冷たさや硬さを感じにくい素材です。
当事務所では水回りの足元にはコルクタイルの採用率が高く、好評です。

洗面脱衣室はどうしても機能優先になりがちですが、
こうした足触りの快適さが、日々の小さなストレスを確実に減らしてくれます。


洗面台は単体のプロダクトとして選ぶこともできますが、
本来は「空間の中でどう機能するか」を含めて設計するものです。

ボールの種類、天板との関係、光の入り方、素材の選び方。
それらが重なったときに、はじめて“使いやすさ”と“居心地”が両立します。

今回のように、ひとつひとつは小さな工夫でも、
積み重ねることで空間の質は大きく変わっていきます。

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