木を”面”で使う選択
前回は、無垢板の下駄箱天板について書きました。
木そのものの表情や存在感を、そのまま暮らしの中に取り込むような使い方です。
一方で今回の玄関収納では、同じ“木”でも少し違う扱い方をしています。
シナベニヤやラワンベニヤといった素材を、木としてではなく「面」として扱う、という考え方です。
なぜ“面”として扱うのか
シナベニヤやラワンベニヤは、無垢材に比べて木目の主張が穏やかです。
そのため、一枚の板として見せるよりも、壁の延長のように連続した「面」として使う方が空間に馴染みます。
今回の玄関でも、収納扉を壁と一体化させることで、
玄関全体の印象をすっきりと整えることを意図しています。
特に玄関のように視覚情報が多くなりやすい場所では、
「見せる木」と「消す木」を使い分けることが重要になります。
素材ごとの特徴と使い分け
・シナベニヤ
木目が非常におとなしく、均質でクセが少ない素材です。
そのため、空間のノイズにならず、建築の輪郭を整える役割に向いています。
塗装の乗りも良く、設計意図をコントロールしやすいのも利点です。
・ラワンベニヤ
一方でラワンは、時間とともに色が深まり、味わいが増していく素材です。
新品の時はやや素朴ですが、経年変化によって空間に厚みが出てきます。
「主張しすぎないが、無機質にもならない」
そのちょうど良い中間に位置している素材と言えます。
メリットとデメリット
メリット
・大判で使えるため、面としての連続性が出せる
・コストバランスが良い
・空間全体を整理しやすい(設計的にコントロールしやすい)
デメリット
・無垢材のような強い素材感は出にくい
・エッジや小口の納まりに配慮が必要
・傷や汚れの見え方は仕上げに依存する
結びに
無垢材は、素材の力を借りて空間をつくる材料です。
一方で、シナベニヤやラワンベニヤは、空間を整えるための材料とも言えます。
どちらが良い悪いではなく、
「どこで主張させ、どこで抑えるか」というバランスの問題です。
玄関のように家の印象を決める場所では、
こうした素材の使い分けが、空間の質に大きく影響してきます。
木を使えば良い空間になるわけではありません。
むしろ、木を“どう見せないか”まで考えて初めて、空間は整います。