兵庫、京都、大阪で誠実に、丁寧に木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所

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兵庫県丹波市を拠点に誠実に、これからの木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所 芦田成人のブログです。

リノベーションについて その15

精密検査のように
リノベーション前の調査では床下や天井裏を
調査することを以前お伝えさせていただいた
と思いますが、では床下や天井裏を覗いて何
が分かるのか?と言うと実は色んなことが分
かります。

人の身体は問診や触診では分からないけども
胃カメラやMRIなどで身体の内部を覗くこ
とで分かることがあるのと同じで、床下や天
井裏を覗くことで、その家の骨格が分かった
り、傷んでいる場所や蝕まれている個所が分
かったりすることがあります。

もっとも隅から隅まで覗ける訳ではないため、
完全把握することは難しく解体時に発見とな
ることもあります。

点検商法にご注意を
珍しいケースでは悪徳点検商法に引っかかっ
てしまっていたのを発見してしまったことも
あります。

天井裏を覗き込んだ際に普段見覚えの無い珍
しい金物が一杯ついてて「あれは、どうされ
たのですか?」と御伺いすると実は飛び込み
の営業マンが来てと、その会社の名前の入っ
た報告書なるものを見せていただきました。

耐震補強とは
耐震補強って屋根裏に金物を取り付けただけ
では補強になることはありません。まずは壁
と接合部(柱と梁が繋がる部位や柱と土台が
繋がる部位など)を補強したり、荷重の軽量
化を計ったり、基礎の補強をしたりなど、全
体的な話になるため屋根だけ、床だけを何と
かすると言った補強は無いものと考えていた
だいて良いと思います。

おまけに、その家では床下を覗き込んだ際に
直ぐ目の前にある樹脂製の床束が変な間隔に
並んでいて手を伸ばして触った所簡単に束が
外れてしまいました。それも1本だけではな
く2本も、おそらく手の届かなかった遠くに
あった束も只、置いてあるだけで全く床を支
えていなかったのです。

消費者センター
私は、その報告書と手で外すことが出来た床
束を持って消費者センターに相談に行くよう
に勧めましたが、事実を知った住人の方は相
当、ショックを受けられていました。何せ、
その業者はテレビCMも大々的に流し、一部
上場している会社だったのですから。後で調
べた所、その会社はそう言った悪徳な訪問営
業による点検商法で一時、国から業務停止命
令を受けていたことも分かりました。

床下で分かること
床下に潜って分かること、雨漏りなどによる
腐朽やシロアリによる蟻害、床下地材のスパ
ンが飛びすぎて居たり、束が少なかったりす
ると床のたわみが大きくなることもあります。

床下は乾燥している方が良いのですが、建物
が建つ場所によってはそのような環境に恵ま
れないことも多々あります。特に山の際に建
つ家などは山からの水の影響を受けやすく湿
気ていることが多いのではないでしょうか。

木材腐朽菌
木材を腐朽させる木材腐朽菌と呼ぶ菌は湿度、
温度、栄養(木材自体)、酸素の4つの条件
が揃うと発生します。これら4つの条件の内、
3つはコントロールの仕様が無いのですが、
湿度に関してはコントロールの仕様があるた
め床下の湿度を抑える工夫を皆がなんとかし
ようと努力しています。

シロアリ
シロアリは突然現れる訳ではなく、先の木材
腐朽菌によって木材が柔らかくなった所を食
害するため、やはり木材腐朽菌が繁殖しない
ような環境づくりが必要なのですが、所が近
年では乾燥した材料にも害を及ぼす乾材シロ
アリと呼ぶ種類も海外の木材に混じって国内
に発生するようになっています。

日本固有種であったヤマトシロアリは殆ど床
下や柱の足元程度までの食害ですが、この乾
材シロアリは2階の桁の高さであっても被害
に遭うことがあるそうですが、私は未だ乾材
シロアリの食害にあった跡を見たことはあり
ません。

よく見るのはヤマトシロアリやイエシロアリ
の被害跡ですが、これらの種類は春先の5~
6月頃の外気が少し暖かくなってくる頃に水
回りなどを中心に羽アリが群飛と言って大量
に発生するため唯一目視で確認出来るタイミ
ングなのですが、丁度この頃になるとCMな
どにも良くシロアリ退治は・・・と言った内
容で流れてきます。

食害跡
写真は解体時に発見されたシロアリによる食
害を受けた土台の部分です。扉の向こう側は
トイレになっていてやはり、水を使う場所の
近辺は湿度も高くなることから木材腐朽菌が
発生する条件が整いやすくなることがこの事
例からもお分かりいただけることと思います。

雨漏りから
こちらの写真は先の写真とは又別の現場です
が、外部に面した柱の足元です。雨漏りなど
によって柱の足元の条件が揃い、木材腐朽菌
が発生した後に柱の内部をシロアリによって
食害された跡です。

シロアリは木材の表面を食べずに薄皮1枚残
した、その内側を食害する傾向があるようで、
外部からは何も被害を受けていないように見
えることもありますが、実はその部分を触る
とペコペコと薄皮1枚が凹んで実は食害に遭
っていたと言ったことが分かることもありま
す。幸か不幸かどちらのケースも撮影箇所の
上の方まで被害に遭っていることはありませ
んでしたので補強工事が大々的になることは
ありませんでした。

イレギュラーを減らす
これらのように、リノベーションでは最初に
予定していなかったケースが登場します。し
かし出来るだけ予定していなかったケースを
減らす意味でも事前の調査は重要になってき
ます。