リノベーションについて その16
構造のお話
今回は少し難しくなるかもしれませんが構造
の問題です。事前調査が必要な理由のナンバ
ーワンがこの問題にあると言っても過言では
ありません。但し、これは間取りさえ把握で
きれば床下や屋根裏を覗かなくても、凡そ判
断できます。
柱が無い
良くあるのが2階の出隅の柱の真下に1階の
柱が存在しないと言ったパターンです。
床の間の横が書院になっていたりするとこの
ようなケース非常に多いのですが何が問題か
と言うと出隅の柱には非常に大きな力が作用
し易いのです。力の流れは上から下へ、即ち
屋根から地面へスムーズに力を受け流し、地
面に伝えることが必要なのですが、その際に
1階の柱が無いと、その力は梁で負担するこ
とになります。従って梁は大きなサイズの材
料が必要になりますが、大きな材料が必要と
言うことは材料費も増えますし、大きさにも
限界があります。他にももっと専門的な理由
はありますが難しすぎるためこの場では割愛
させていただきます。
下図が、その一例です。このケースでは「2
通」と「ろ通」の交点に2階の柱が載ること
になるのですが、その位置の1階には柱が存
在しません。しかし直ぐ隣の「3通」に柱が
存在するため、このケースでは未だマシな方
かもしれません。
極端な例ですが
しかし、次のケースになると「ろ通」には
「1通」と「6通」にしか柱が無い上に2階
には「2通」の位置に柱が載ります。こうな
ると構造的には相当無理な計画になり何かし
らの問題が起こる可能性が高くなります。極
端な例を挙げましたが、リノベーションでは
往々にしてこのような無謀な構造計画がされ
ているケースも結構あります。
直下率
ですので力の流れをスムーズに流そうと思え
ば2階の柱の真下には1階の柱が存在してい
ることが理想となります。上下の柱の位置の
一致する割合を直下率と言う言葉で表すので
すが、直下率の低い建物は繰り返し地震にも
弱いと言うことが発表されています。繰り返
し地震とは直近では熊本県を中心に起こった
大きな地震が数日の内に起こることを指しま
す。
スパン飛び過ぎ問題
これも又、間取りを把握できれば凡そ、分か
るのですが柱と柱の間隔が大きく空いている、
いわゆる構造スパンを飛ばしすぎている間取
りが存在ます。スパンを飛ばし過ぎると、経
年で2階の床のたわみが大きくなったり、下
屋に問題が起こることもあります。
2間以内に柱が欲しい
新築で考える場合は、単純梁の状態でスパン
2間で材料の成が約8寸で考えられます。こ
れは両端の柱の上に載る梁の上には何も荷重
が載らない状態での話です。下図が、その内
容を説明したものになります。
丘立ち柱
仮にそのスパンの上に柱や束が載ると梁の成
は8寸では持ち堪えられません。建物が新し
い内は何ともない様に見えても次第にたわみ
が大きくなるため2階の床に影響が出ます。
その柱や束が1本、2本と本数が増える度に
梁成を大きくする必要がありますが、材成に
も限界がありますので私の場合、新築建物で
は出来るだけ梁の上には柱が載らないような
計画を目指すのですが、どうしても仕方ない
場合は1本だけ柱や束が立つように収める努
力をしています。
大丈夫だろう?は大丈夫では無い
何度も繰り返しになりますが、リノベーショ
ンでは、無理な構造計画になっていることが
良くあります。
大きな梁が入っているから大丈夫だろうと思
っていても計算してみるとアウトになってい
るケースも非常に多く、これを是正できるの
はリノベーションの機会しかありません。
見た目よりも中身が大事
見た目重視の無柱大空間も良いけれど、その
危うさを良く知っておくことが重要ですし、
下手に床を抜いて吹き抜けを造っても良くな
いケースも出てきます。
その意味でもトータルにバランスを見て判断
する目を持つ人に仕事を依頼する方が賢明で
す。