震災のたび、建築は問い直される
1日遅れとなりましたが「3.11」を偲び、ブログに記させていただきます。
田んぼの間を縫うあみだの道を
数台の車が必死に逃げていました。
そのすぐ後ろから、
黒い水が押し寄せてきます。
「逃げろ、逃げろ。」
テレビの前で、そう祈ることしか出来ませんでした。
15年前の先日、
東日本大震災の日のことです。
その時、私は事務所でお客様と打ち合わせをしていました。
打ち合わせが終わり、
いつものようにラジオをつけると、
大きな地震があったというニュースが流れてきました。
ただ、その時丹波では
揺れをまったく感じませんでした。
遠くで起きた出来事のように
最初はどこか現実感のないまま聞いていたのを覚えています。
気になってテレビをつけると、
そこに映っていたのが、
津波が田んぼを飲み込もうとしている光景でした。
私は阪神淡路大震災で被災はしていませんが、
当時、大阪の豊中に住んでいたため震度5の揺れを経験しています。
建物がきしむ音。
家具が揺れ、食器が床に落ち、割れる音。
あの時の空気は、
今でも身体が覚えています。
建築の世界では、
大きな震災が起こるたびに
国の基準が少しずつ見直されてきました。
1981年には新耐震基準が設けられ、
阪神淡路大震災の後には
木造建築の規定にも見直しが入りました。
そして昨年2025年には、
いわゆる4号特例が廃止されました。
木造住宅であっても、
安全性の根拠を示すことが求められる時代になりました。
建築は、
震災が起きた後に評価される仕事です。
普段は意識されることがなくても、
いざという時に人を守れるかどうか。
その結果が、
建物の本当の価値を決めるのだと思います。
耐震性能というと、
耐震等級という数字で語られることがあります。
もちろん大切な指標です。
ただ、建物の強さは
数字のゲームではありません。
壁の配置
建物のバランス
構造の考え方
そうした設計の積み重ねが
建物の安全性を大きく左右します。
だから私たちは、
数字だけではなく、
建物全体の構造バランスを大切に設計しています。
テレビに映っていた、
あの田んぼの一本道。
あの車が無事に逃げ切れたのか、
今でも分かりません。
ただ、あの映像を見るたびに思います。
家は、美しいだけでは足りません。
人を守れてこそ、建築だと思います。
私たちは丹波で住宅の設計をしています。
暮らしを支え、いざという時には人を守る建築。
そんな家を丁寧に考え続けていきたいと思います。