兵庫、京都、大阪|良い実が、良い土から育つように。暮らしを主役に、建築は健やかに支える。|芦田成人建築設計事務所

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兵庫県丹波市を拠点に誠実に、これからの木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所 芦田成人のブログです。

Y字の枝が呼びかけてくる

剪定した後の栗園は伐った枝の山があちこちに散らばっています。
このままでは、これから先のシーズンで草刈りの邪魔になるため、この枝の山を放置しておく訳にはいきません。伐った枝を、柴や薪に分解する作業を先日行いました。

手を動かしながら仕分けていると、ふと、少し太めの枝をそのまま残している自分に気づきました。
二股に分かれた、Y字の枝です。

特別きれいなわけでもない、真っ直ぐでもない
それでも、なぜか捨てずに手元に置いておきたくなる。

理由を考えると、その「かたち」にある気がします。

Y字という形は、不思議と安定しています。
何かを支えることもできるし、引っ掛けることもできる。
受け止めるための形、と言ってもいいかもしれません。

子供の頃、この形の枝を見つけては、先にゴムを結び、石を飛ばして遊んでいました。
いわゆる手作りのパチンコです。

あるいは、地面に差し込めば釣竿を立てる道具にもなる。
少し工夫すれば、庭の支柱や、簡単な道具掛けにもなる。

面白いのは、最初から用途を決めていたわけではないことです。
この形を見たときに、「何かに使えそうだ」と感じる。
そして後から、使い道が立ち上がってくる。

設計も、どこか似ているように思います。

敷地の形、周囲の環境、光の入り方や風の抜け方。
それらはすでにそこにある「条件」です。

設計というと、何もないところから新しいものを生み出すように見えますが、
実際には、その場所にあるものを丁寧に読み取ることから始まります。

与えられた条件の中に、すでにヒントは含まれている。
それをどう捉え、どう引き出すか。

Y字の枝を手に取って、使い道を探す感覚に、少し似ています。

既製品は、用途があらかじめ決まっています。
一方で、自然のものには、決まった使い道がありません。

だからこそ、「どう使うか」をこちらに委ねてくる。
言い換えれば、暮らしの中に余白を残してくれる存在です。

今回残したY字の枝も、まだ何に使うかは決まっていません。
けれど、手元に置いておこうと思っています。

そのうち、ふとした瞬間に、
「あ、これだ」と思える使い方に出会う気がするからです。

少しだけ、用途の決まっていないものを持っておく。
そんな余白が、暮らしをほんの少し豊かにしてくれるのかもしれません。