真壁と言う選択

完全に真壁で構成した空間

最近の住まいを見ていると、構造がすっかり見えなくなったと感じることがあります。
壁の中に柱や梁を納める「大壁」が主流となり、空間は整い、性能も確保しやすくなりました。
一方で、“何でできているのか”が分かりにくい住まいが増えたとも言えるかもしれません。

そんな中で改めて考えたいのが「真壁」というつくり方です。
柱や梁をあえて見せる納め方で、木の家であることを素直に感じられる構成です。
木にとっても無理のない工法であり、長い年月の中で受け継がれてきた理由があります。

真壁の良さは、見た目の美しさだけではありません。
構造材である柱が露出していることで、後から棚を付けたり、釘を打ったりといった暮らしの変化に柔軟に対応できます。メンテナンス性の高さも見逃せないポイントです。
住まいが“完成品”ではなく、“使い続けるもの”であることを前提にしたつくり方とも言えます。

一方で、もちろん課題もあります。
壁の中に納める断熱材の厚みが制限されるため、外側に付加断熱を施すなどの工夫が必要になります。
性能と意匠の両立には、設計段階からの丁寧な検討が欠かせません。

そして設計者として最も神経を使うのは、柱や梁の「見せ方」です。
規則正しく並ぶ柱のリズムは美しさを生みますが、間取りの都合でそのリズムが崩れる“間崩れ”が生じたときに難しさが現れます。どこで揃え、どこで外すのか。その判断一つで空間の質は大きく変わります。

真壁の空間は、構造そのものが意匠になります。
つまり、構造計画とデザインを切り離して考えることができません。
同時進行で組み立てていく必要があり、設計者の力量がそのまま現れる構造だと感じています。

だからこそ、空間の要所に真壁を取り入れるという選択も有効です。
例えば、リビングの一角や、視線の抜ける場所に真壁を採用することで、木の魅力を強く感じられるポイントをつくる。現代の性能要求と折り合いをつけながら、伝統的な手法を活かすひとつの方法です。

真壁は、単なる“昔ながらの工法”ではありません。
構造と意匠が一体となる、建築の本質に近い考え方だと思います。
木を見せるということは、同時に設計の精度も問われるということ。
そこにこそ、この手法の面白さと難しさがあるのではないでしょうか。

大壁の部分と真壁の部分がミックスされた空間

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