リノベの勘所 第2話

建て替えかリノベか悩む夫婦

写真はイメージです

その家、本当に建て替えた方がいいですか?

「この家、もう古いので建て替えた方がいいですよね。」

住宅の相談を受けていると、そんな言葉を聞くことがあります。

確かに、長く住んできた家であれば、設備は古くなり、断熱性能も現在の住宅と比べれば十分ではないかもしれません。

壁や天井に傷みがあったり、間取りが今の暮らしに合わなくなっていたりすることもあります。

そうなると、「いっそのこと全部壊して、新しい家を建てた方がいい。」

そう考えるのも無理はありません。

でも、私はそこで一度立ち止まって考えます。

「本当に、この家は建て替えなければならないのだろうか?」

古い=建て替え、ではありません

築年数だけを見れば、確かに古い家です。

しかし、家の価値は築年数だけでは決まりません。

例えば、

・しっかりした柱や梁が残っている
・長い年月を経た木材に味わいがある
・庭と建物の関係が良い
・昔ながらの風通しの良い間取りになっている
・古い建具や左官壁が、その家らしい雰囲気をつくっている

そんな家もあります。

これらは、古いという理由だけで壊してしまうには、少しもったいないものです。

国土交通省も、既存住宅について
「いいものを作って、きちんと手入れして、長く使う」
方向への移行を重要な考え方として示しており、耐震・省エネなどの性能向上を含めた既存住宅の活用を進めています。

つまり、古い家だから価値がないのではありません。

「その家が今、どんな状態なのか」を調べてから判断することが大切なのです。

建て替えかリノベーションかは、
まず「家の健康状態」を見る

人間でも、年齢だけを聞いて健康状態を判断することはできません。

70歳だから体が悪いとは限らないし、40歳だから健康とも限りません。

住宅も同じです。

築年数だけでは、その家の状態は分かりません。

実際に建物を見て、

・基礎はどうなっているか
・柱や梁は傷んでいないか
・雨漏りはないか
・シロアリの被害はないか
・屋根や外壁の状態はどうか
・現在の耐震性はどうか
・断熱性能はどの程度なのか

などを確認する必要があります。

場合によっては、インスペクションや耐震診断などを利用することも有効です。

国土交通省も、既存住宅の流通やリフォームにおいて、インスペクション、住宅履歴、既存住宅の性能評価などを活用する仕組みを整備しています。

そして、もう一つ大切なこと

建物の状態を確認するだけでは、まだ答えは出ません。

もう一つ考えなければならないのが、

「この家で、これからどんな暮らしをしたいのか」

ということです。

例えば、

「家族が増えて部屋が足りない。」

「冬になると家の中が寒い。」

「台所が狭くて家事がしにくい。」

「親と一緒に暮らすことになった。」

「子どもが独立して、部屋が余っている。」

こうした問題があるなら、建て替えなくても解決できる可能性があります。

逆に、建物の状態や法的な条件、希望する暮らし方によっては、リノベーションより建て替えの方が合理的な場合もあります。

だから私は、

「リノベーションありき」でも「建て替えありき」でも考えません。

まず、その家と暮らしの両方を見るようにしています。

リノベーションは「古い家を新しくする」ことではない

ここで、前回の話にもつながります。

リノベーションというと、

「古いものを新しいものに交換すること」

と考えがちです。

古いキッチンを新しくする。

古い浴室を新しくする。

古い壁紙を張り替える。

古い床を新しくする。

もちろん、それもリノベーションです。

しかし、それだけなら、その家である必要はありません。

私はリノベーションをするとき、

「残すもの」と「変えるもの」を見つけること

から始めたいと考えています。

例えば、柱や梁は残す。

一方で、耐震性能は向上させる。

古い建具はできるだけ活かす。

一方で、断熱性能は現在の暮らしに合わせて改善する。

庭は残す。

その代わり、庭とのつながりが生まれるように窓や間取りを考え直す。

そんなふうに、

古いものを残すことと、新しい暮らしをつくることを両立させる。

そこにリノベーションの面白さがあります。

建て替えではなく、リノベーションだからできること

新築には、新築の良さがあります。

構造も設備もすべて新しくでき、現在の暮らしに合わせてゼロから計画できます。

一方、リノベーションには新築にはない魅力があります。

それは、

すでにそこにあるものを利用できること。

長い年月を経た柱。

手仕事の跡が残る壁。

古い建具。

庭。

周囲の風景。

その土地で積み重ねてきた時間。

こうしたものは、新築では新しくつくることができません。

だからこそ、私は古い家を見るとき、

「何が古いのか?」

だけではなく、

「何がこの家にしかないのか?」

を見るようにしています。

ただし、何でも残せばいいわけではありません

ここは誤解してほしくないところです。

「古い家を活かす」と言っても、すべてを昔のまま残す必要はありません。

安全性に問題があるなら、改善する。

断熱性能が不足しているなら、向上させる。

使いにくい設備は更新する。

暮らしに合わない間取りは見直す。

必要であれば、古い部分を取り除くこともあります。

大切なのは、

「残すこと」そのものを目的にしないこと。

その家にとって何を残す価値があるのか。

何を変えれば、これからの暮らしが良くなるのか。

その判断をすることです。

建て替えるかどうかは、
「古さ」ではなく「可能性」で考える

古い家を見て、

「もう古いからダメだ。」

と判断するのは簡単です。

でも、「この家には何が残っているだろう?」

「これを活かしたら、どんな暮らしができるだろう?」

と考えてみる。

すると、同じ家でも見え方が変わってきます。

もしかすると、建て替えなくてもいいかもしれません。

もしかすると、建て替えた方がいいかもしれません。

どちらが正解なのかは、家によって違います。

だからこそ、私は最初から答えを決め付けてしまわないことが大切だと思っています。

建て替えるか、リノベーションするか。

その答えを出す前に、

まずはその家をよく見る。

そして、その家でこれからどんな暮らしをしたいのかを考える。

そこから、本当のリノベーションが始まります。

リノベの勘所

「古いから建て替える」のではなく、
「残す価値があるから活かす」という選択肢もある。

建物の年齢ではなく、
その家の状態と、これからの暮らし。

その二つを見てから、建て替えるのか、リノベーションするのかを考えてみてはいかがでしょうか。

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