兵庫、京都、大阪で誠実に丁寧に木の家をつくる芦田成人建築設計事務所
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兵庫県丹波市を拠点に誠実に、これからの木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所 芦田成人のブログです。

住まいづくりを振り返る その3

住まいづくりを振り返るシリーズの、その3 はプラン編の続きです。 先日、脱線していった採光計画についてです。

こちらの、お住まいは寒さが苦手なご夫婦の為に暖かい住まいをご提供する事が大きなテーマでした。

明るい事と、光が直接射し込む事は似ているようで少し意味が違います。

明るいと言うのは光を間接的に取り込んで拡散させる事でも実現できますが、そこには温度が伴いません。

方や光が直接射し込む事は室内の温度に影響します。

先日の金環日食の際に一瞬にして辺りが暗くなり、少し温度も下がったと言う事を体験した方も多いと思いますが、太陽の陽射しが遮られる事はかくも我々の生活に影響を受けることを実感した瞬間でした。瞬間であったから良かったのですが、仮にもし、あの状態が永遠に続いたなら、と想像するとぞっとします。

と又話が脱線しかかっていますので修正を

直接陽射しを受ける事を計画の際に検討した図が下です。

採光検討図

図が小さくて分り難いのですが、要は夏と冬の太陽の動きと隣地建物との影響を考慮して光が住まいの中にどれ程射し込んで来るのかを検討した図です。これによると吹抜の効果で、冬は陽射しが、かなり住まいの奥深くまで届く事が分かります。これを頭に置き、では実現した建物ではどの程度まで、そのシミュレーションが合っているのかを示したのが下の写真です。

陽射しの入り方写真

幸いにもシミュレーションは冬至南中時の陽射し、写真の撮影日時もほぼ冬至南中時後しばらく、図と写真の陽射しの角度がほぼ一致している事が分かります。

次に、光が直接射し込むことは温度に関係すると申し上げました件です。

実は、計2日間あった見学会当日に上写真左手あたりにあるカウンター上に温熱測定器を据えて記録を取ってみたのですが、その結果が下図です。

温熱測定データ

こちらも又小さくて見にくいのですが、横軸に時間(6時間ごとに目盛りが入っています)、縦軸に温度と湿度(緑が10℃(若しくは%)、後は10℃(%)ごとの目盛りです)示したグラフです。

上の赤い線が湿度の変化を、青い線は温度変化を示しています。

緑で入れた横線は10℃のライン、黄色の縦線は2011/12/18の午前9時を示しています。

注目すべきは青のグラフ、2011/12/17 午前9時頃から記録をスタートし、その直後こそ一瞬、室内温度が10℃を切ってはいますが、それ以外は一度も室温10℃を切っている時間が無い事。(一瞬だけ10℃を下回ったのは荷物搬入のために出入り口をしばらく開け放った事が原因です)

そして、記録開始直後徐々に温度が上がっているのは、見学会用に持ち込んだファンヒーターと陽射しにによる効果ですが、陽射しによって昼間は充分に暖かかったのでファンヒーターを MIN設定から、やがて OFF にしてしまいました。

1日目終了後、徐々に温度も下がり始めていますが、それでも10℃を下回ることは1度も無く次の日を迎えています。

ちなみに、この両日とも夜中はかなり冷え込み気象庁データによると17日の21時頃から18日の9時頃までの近くの測定ポイントでは外はずっとマイナスの気温が続いていたと記録されています。と言うことは夜中から朝方にかけて室内外では、その差10℃以上と言う事になります。

この記録によると急激な温度変化は間違いなく暖房器具によるものですが、緩やかな変化は陽射しによるものの影響を示すと解釈しているのですが、それらを逃がさないようにしっかりと断熱を施した事の効果も作用したのだと思います。

このように光熱費の削減にも効果がある日射の取得と断熱と言う概念は、これからの住まいづくりには欠かせないものとなっています。しかしこれらの考え無しにいきなり太陽光発電パネルを屋根に載せる事は発想に矛盾があります。

作ったエネルギーを上手に生かすにはその前にしっかりとエネルギーの出口を絞る事を忘れないような住まいづくりをしておく事を御考え下さい。

最後に余談となりますが、上記測定結果の黄色の縦線よりも右側で急激に室内温度が上昇しているのは、見学会2日目の朝、暖房器具の能力を全開にしてスイッチオンした事が原因です。

と言う訳で、振り返るシリーズ 3回目はここまで。

まだまだ、このシリーズは続きますので、お付き合いの程宜しくお願い致します。