兵庫、京都、大阪で誠実に丁寧に木の家をつくる芦田成人建築設計事務所
兵庫、京都、大阪で誠実に、丁寧に木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所

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兵庫県丹波市を拠点に誠実に、これからの木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所 芦田成人のブログです。

組めない継手

ここ数回、これまでとは異なった内容のように見えるかもしれません。 「どうしたんだ、急に!」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。

別に何かがあった訳ではありませんし、今のウェブサイトに切り替える前もこのような内容を割と投稿していたと思います。

先日、大学の同窓会兼忘年会がありました。大学と言うことで皆が、建築業界です。そして多くの設計事務所主宰者もいました。

同じような悩み、同じような思いで仕事をしていることも分かりました。

「正直者が馬鹿を見る」、そのような状態に陥りやすい業界であるとも感じました。

「たかが絵を描くぐらいで・・・」そのような考えを持つ方が多いこの国ですが、そう思われないように改めて魅力の発信を日々、努力し続けることに気付かされた日でもありました。

さて、「たかが絵」と申し上げましたが、木造住宅の世界では、設計の人間が現場に深く関わることを敬遠される大工さんも、時々いらっしゃいます。

昔は、木造住宅と言えば大工さんが主役の世界で、設計者が関わることはかなり少なかったのです。

又、そのような理由から未だに木造に首を突っ込まないと言う設計者も沢山います。

所が、阪神大震災での倒壊調査などが進められる内に、そこにも設計者が介する理由が見出されるようになりました。

しかし聞く話によると、まともに施工も出来ないような図面が出てくることがあるそうで、そのような理由により設計者が木造住宅の現場に深く関わることを嫌う大工さんが多いと聞きます。

はい、正しく理解出来ていない設計者が図面を引いていることが理由だと思います。

そこで、木造を手掛ける私としては、このような事態を極力減らす必要があると感じています。

私の強みは、職人さんの仕事や考えを少しでも理解できる経験があると言うことだと思います。経験と言いましても、大したものではありませんが、2年半ほど道具の扱い、木の刻みに対する考えなど、ある程度観て聴いて、そして自分でも手を動かしています。専ら最近は、本業に専念のためご無沙汰ですが・・・。

私の事務所には、組めない継手のモックアップがあります。写真の物がそれなのですが、これは私が実際に手を動かして刻んでみた、「追掛け大栓継ぎ(おっかけだいせんつぎ)」と呼ばれる継手です。

追掛け大栓継ぎ

実際、私共設計の現場でも見える個所に採用する事の多い継手です。刻み(のこ)、鑿(のみ)、鉋(かんな)、これらの道具が必要で、墨付けから全てチャレンジしたものです。あと少し叩けば完全に組めると思いますが、これ以上は下に沈みません。理由は簡単で、材と材の接触面の鉋掛けがきちんと出来ていなかったことです。初チャレンジでここまで出来ればいいのではないかと自分で自分を慰めていますが、現場であれば大目玉でしょう。

しかし、私の目的は、これを完璧に組む事ではなく、大工さんが何をしているのかを知ること。それが設計者として大事なことだと思います。それを知っていることで、いい加減な図面を出さずに済みますし、現場での打合せもスムーズに進みます。

「適当に納めておいて」と言う無責任な発言を減らすこと、意図を的確に伝えられる図面であること、そう言ったことを常に頭に置きながら日常業務に勤しんでいます。