Narito Ashida Narito Ashida

紙と布と言う選択

縁望の家 玄関ホール

下駄箱の面材は和紙張りとしています

これまで下駄箱の天板や面材として、無垢材やシナ・ラワン合板を使った事例をご紹介してきました。
いわば「木をどう使うか」というお話です。

今回は少し視点を変えて、木以外の素材について触れてみたいと思います。

下駄箱の扉というと、「木でつくるもの」というイメージを持たれる方が多いかもしれません。
もちろんそれも一つの正解ですが、実は扉に求められる性能は、木でなくても十分に満たすことができます。

例えば、和紙。
紙と聞くと少し頼りない印象があるかもしれませんが、和紙は繊維が絡み合っていて、しっかりとした強度があります。
それでいて、光をやわらかく受け止める質感や、時間とともに少しずつ変化していく風合いは、木とはまた違った魅力です。

そして、紙はもともと木からつくられています。
そう考えると、木と和紙の組み合わせは、まったく別の素材というよりも、どこかつながりのある関係とも言えます。

たつのの古民家リノベ 玄関ホール

下駄箱の面材をファブリックで仕上げた例、繊維独特の微妙な色の出方が美しい

もうひとつ、ファブリック(布)を使うという選択もあります。
布は触れたときにやわらかく、冷たさを感じにくい素材です。
毎日使う下駄箱だからこそ、こうしたちょっとした感触の違いが心地よさにつながります。

また、色や織り方によって表情を変えられるのも、布ならではの特徴です。
空間に少しだけやさしい雰囲気を加えてくれます。

木と紙、木と布。
一見すると違う素材ですが、どちらも自然から生まれたものです。
そのため、組み合わせたときにもどこか無理がなく、自然に空間になじんでいきます。

木の家だからといって、すべてを木で揃える必要はありません。
むしろ、こうした異なる素材を少し取り入れることで、木の良さがより引き立つこともあります。

素材選びは「何を使うか」だけでなく、「どう組み合わせるか」。
下駄箱のような身近な部分にも、その工夫を少し取り入れてみると、暮らしの中で感じる心地よさが変わってくるかもしれません。

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玄関に入った瞬間の、あの感じ

大きな屋根に守られて 玄関ホール

大きな屋根に守られて 玄関ホール

陽だまりで繋ぎました 玄関

陽だまりで繋ぎました 玄関ホール

回って抜けて多動線の家 玄関ホール

回って抜けて多動線の家 玄関ホール


玄関に入った瞬間、
「なんだか落ち着くな」と感じる家があります。

広いとか、新しいとか、そういう分かりやすい理由ではなくて、もっと感覚的なもの。

今回の写真の住まいも、そんな空気を持っています。

その理由のひとつが、下駄箱の天板に使った無垢の木です。

数枚の板を剥ぎ合わせて、大きな天板として仕上げています。
よく見ると、木目も色も少しずつ違っていて、均一ではありません。

でも、その“ばらつき”があるからこそ、
光が当たったときの表情に深みが出て、空間にやわらかさが生まれます。

玄関は、外から帰ってきて最初に触れる場所。
鍵や荷物を置いたり、ふと手をついたり。

そんな日常の何気ない動作の中で、
自然と木の質感に触れることになります。

最近は、こういった天板にも集成材を使うことが増えています。
寸法が安定していて、扱いやすい、とても合理的な素材です。

ただ、こうして無垢の木を使ってみると、
少しだけ“時間の流れ方”が違うように感じることがあります。

使っていくうちに少し色が変わったり、
小さな傷がついたり。

でもそれも含めて、暮らしに馴染んでいく。

玄関という場所に、そうした変化を受け止める余白があると、
家に帰る時間が、少しだけ豊かになる気がします。

無垢が良い、集成材が悪い、という話ではありません。
ただ、どこにどんな素材を使うかで、
暮らしの感じ方は変わるのだと思います。

玄関の一枚の板が、
その家の印象を静かに決めているのかもしれません。

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