兵庫、京都、大阪で誠実に、丁寧に木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所

Blog

兵庫県丹波市を拠点に誠実に、これからの木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所 芦田成人のブログです。

リノベーションについて その12

木造住宅のリノベーション
今回は木造住宅のリノベーション実例を紹介
させていただきます。ひとえにリノベーショ
ンと言っても建物全体をリノベーションする
場合もあれば、その一部だけをリノベーショ
ンする場合もあります。

補助金を上手に活用しましょう
今年も又、断熱改修や窓の設置に関する国の
補助事業が行われているので、そのような補
助金をうまく活用しすれば、よりお得に工事
が出来ます。

部分リノベーション
そして、今回は部分リノベーションの事例に
なります。2階建ての建物の1階の殆どのス
ペースを二期に分けて工事させていただきま
した。

ご要望
お子さんたちも既に巣立たれて、定年までは
未だ数年働く時間のある、ご夫婦お二人がこ
れからの人生を丁寧に暮らすことを目的とし
たリノベーションです。まず一期工事では生
活のメインとなるLDKスペースの工事を行
いました。将来、1階だけで生活が完結する
ようにしておきたいとのご要望と住まいの暑
い寒いを何とかしたいとのご要望が最も大き
な内容でした。

元の間取り
1階には水回り(浴室、洗面脱衣、トイレ)
とDK、そこに隣接する和室、玄関、廊下、
階段のある間取りでした。

方向性
将来、1階で生活が完結するようにするため
には、そこに就寝のためのスペースが必要に
なります。そこでDKと隣接する和室の間の
壁を取り払い、ひとつながりの空間としてい
ます。和室があった部分にはベッドを置ける
ようにスペースを確保しています。そして、
回れる動線になっていた廊下は、ご夫婦お二
人でもあり、コンパクトな、このお住まいに
とってライフスタイルにそぐわなくなったと
判断し、違うスペースとして割り当てていま
す。

1.DKスペース(AFTER)

いつも綺麗に片付いている
こちらのお住まいは完成後も時々訪問させて
いただく機会があるのですが、いつお伺いし
ても、この写真の状態からあまり変わってい
ません。台所周りにあった雑多なものは、全
て収納の中に収められています。流し台の背
面は窓を小さくして大きな収納を設けていま
す。収納は場所があれば良いというものでは
なく、適材適所にスペースを割り当てる必要
があります。

2.ダイニング(AFTER)

内障子
この写真にある1本の柱は、工事前の間仕切
り壁の中にあったもので撤去することは出来
ませんでした。内障子は左右の壁の中に引き
込まれるため、障子を引き込むと窓が現れま
す。

3.LDスペース(AFTER)

ひとつながり
こちらは、元和室であったスペースをひとつ
ながりにして、将来ベッドを置くことを想定
しています。そのためベッドが壁と触れる部
分は壁面を保護するために板張りとしていま
す。テレビは台の上に置くとスペースをより
占拠してしまうため壁掛けとしています。

4.小上り

おこもりスペース
上の写真の白い壁の位置と下写真Dのインタ
ーホンがついた壁が同じ位置になります。D
の写真にある3枚扉の内、左2枚の向こう側
は収納で右1枚は廊下につながる扉になりま
す。収納のあった一部を小上がりの畳スペー
スとし、そのさらに奥には将来、引き受ける
ことになるかもしれない仏壇置き場のスペー
スを設けています。この小上がりは畳1枚に
も満たないコンパクトなスペースなので寝転
がることは出来ませんが、壁に背を当てて足
を延ばすことは出来ます。人、一人が佇むに
は丁度良い、おこもりスペースです。

A)左上・・・1の写真の工事前
B)右上・・・2の写真の工事前
C)左下・・・3の写真の工事前
D)右下・・・4の写真の工事前

5)1階測定結果

6)2階測定結果

温熱測定
一期工事はキッチンを触ることから、工事中
の不便さに配慮して暖かい時期を選んで工事
をしています。在宅しながらの工事でしたが、
工事中は外にある流し台を使って、まるでキ
ャンプをしているみたいですと不便さを楽し
み工事の完成をお待ちいただきました。

又一期工事後の翌年の2月に温熱測定を実施
させていただきました。上の2枚が、その測
定結果です。1枚目が工事をした後の測定結
果で、2枚目は工事をしていない2階の部屋
の同じ期間の結果です。

赤いラインが温度で青いラインは湿度のデー
タです。上は青と赤が交錯していて、下はそ
れらが交錯していないので、エラーしている
ように見えるかもしれませんが測定した機器
が違うものでしたので表示方法が異なってい
るだけで決してエラーしている訳ではありま
せん。上は縦軸が左右にあって左に温度を、
右に湿度が表示され、下は左側のみに縦軸が
あります。

注目していただきたいのは両者の平均室温と
最低室温です。工事をした1階の平均室温が
16.2℃であるのに対し、工事をしていない2
階は平均12.2℃です。滞在時間の差はありま
すが、結構大きな差が出たと思います。又1
階の最低室温は10℃を切っていないのに対
し2階は10℃を大きく下回り、その半分以
下の数値になっています。これは、何度も言
いますが断熱対策による効果で、数値によっ
てはっきりと結果が現れています。

E)上左 、 F)上中 、 G)上右
H)下左 、 I)下中 、 J)下右

単なるお化粧直しではない
上の6枚の写真は解体時、床防湿、床壁天井
それぞれの断熱施工の様子、一部土台にはシ
ロアリによる蟻害が見受けられた様子です。
リノベーションとは単なるお化粧直しではな
く、人に例えるとクリニックで検査を受けて
その結果を受けて悪い部分、不都合な部分も
治療するのと同じで、構造的欠陥を見直し、
断熱性能を上げて健康で快適に暮らせるよう
にし、尚且つ人の感性に訴えかけるように仕
上げることが本来の目的です。ですので見た
目だけを良くする訳ではありません。

7)左・・・洗面脱衣工事後 
8)右・・・洗面脱衣工事後

L)左・・・洗面脱衣工事前
M)右・・・洗面脱衣工事後

2期工事
一期工事の結果を受けて、その3年後に2期
工事を行わせていただきました。2期工事は
洗面脱衣と浴室のみです。工事前は、お風呂
と洗面所が寒すぎて、入っても直ぐに出てく
るんだと仰ってました。

こちらも一期工事と同様に、工事の内容は同
じで寒さ解消のための断熱施工を両スペース
ともにしっかりと施しています。洗面脱衣場
は滞在時間こそ短いものの洗面、洗濯、物干
し、お化粧、収納など使用頻度が高い場所で
す。

そう言った場所を如何に快適につくれるかを
考えました。そこでの行為は洗濯物を干した
り、脱衣の際に手を上に上げはするものの、
それ以外はそんなに天井の高さはなくても良
いのではないか?と考えました。

すなわち一部、天井が低くなっている部分が
あってもいいのではないか?と考えました。
それは洗濯機や洗面器の真上の空間が正にそ
れで、手を上げ下ろしする軌道を考えると円
弧が描けたことから、天井の円弧(R)が生
まれました。そのRは直接壁に接することな
く、壁との間に少しスリットを設け、その隙
間に照明を仕込んで部屋全体を照らしていま
す。

こちらは洗面脱衣と浴室の工事中の様子です。
浴室の床と基礎立ち上がり全面への断熱や浴
室~洗面脱衣室間の床下人通口の断熱です。

3期工事
長らく空き地になっていた、隣地にアパート
が建ち、家の目の前がアパートの駐車場にな
ってしまいました。今のままでは落ち着いて
窓も開けられないとのことで三期工事を行う
ことになりました。庭に緑は要らないとのこ
とでしたが、そう言わずに1本だけでも良い
ので植えませんか?とお勧めしました。

塀の素材を何にするかに迷いましたが木の塀
にした場合、塀の裏側のメンテナンスがし難
いためガルバリウム鋼板による目隠し塀にし
ています。

人の背丈分ほどの高さのある塀なので、そこ
そこ圧迫感が出るかな?とも思いましたが室
内からは意外に圧迫感を感じることはありま
せんでした。このように三期に渡る工事を終
え、すっかり見違えったお住まいでご夫婦お
二人の丁寧な生活が日々送られていることを
祈りたいと思います。