丁寧に暮らす家(リノベーション)/ 2020年


お子様が独立されて数年、ご夫婦お二人で生活される住まいのリノベーションです。
住まい手は、これからの人生を「丁寧に暮らしたい」と話されました。その想いを受けて、先ずは落ち着きある質の高い空間創りを目指しました。
そしてプランの余白部分に、こもりたくなる居場所を設けました。この余白の部分は結果的に、奥様の一番のお気に入りスペースになりました。
居場所ごとに空間の見え方、感じ方がユニークに変化します。これは素材の使い方や天井高さを切り替え、開口部の形状や位置、大きさなどを操作することで実現しています。


  • 「コアリノベーション」
    一日の中で多くの時間を過ごす住まいの核(コア)となる部分を工事するリノベーションを「コアリノベーション」と名付けました。
    私達の唱えるコアリノベーションでは国産木材を多用し、暮ら しに潤いを与えること、住宅の質と居住環境の向上を目指した 誠実で丁寧な対応を心掛け取り組んでいます。
    住まい全体を工事するよりもコストを抑えた上で、居心地や快適性を向上させることが出来ます。


建築場所 京都府福知山市
敷地面積 143.07 ㎡(43.28坪)
建築面積  52.39 ㎡ (15.85坪)
延床面積 97.02 ㎡ (29.35坪)
工事対象面積 39.78 ㎡(12.03坪)
Q*値・・・6.0(温暖地の省エネ基準相当は6.4なので、基準をクリアしていることになる)

Q*値とは区画熱損失係数のことで(キュースター値)と呼ぶ。
区画した部屋(暖房室)の範囲の断熱性能評価を現わす指標。
暖房区画からの熱損失量(W/K)÷暖房区画の床面積(㎡)で算出する。

新築住宅では家全体が断熱された区画になるが、今回のような部分断熱補強では
新築と同じような計算式を用いることが出来ないために考えられた計算値である。


大事な情報は最後に載っています!
完成した写真だけを見るのではなく、是非その後の記事にも目を御通し下さい。


内障子のある食堂
ダイニングキッチン
リビングダイニング

この家で長い時間を過ごす場所を中心に工事を行いました。これらの写真で見えている範囲がほぼ全てと言っても過言ではありません。
空間の質を高め、温熱改修も行いました。天井高さをやや抑え気味に設定し、用いる素材もこだわりました。
足腰が衰えて、将来仮に1階で生活することになっても、そこで生活が完結できることが理想です。
そこで参考にしたのがホテルのような雰囲気です。部屋のどこに居ても非日常的ではあるけども、何故か落ち着く。
プランの余白に設けた小上がりの出入り口を丸くすることで、そこにこもる感じが生まれます。
自然とここに居る事が心地いい場所でもあります。
壁四面、どちらを向いても見える景色が違うため、コンパクトなスペースでも飽きることはありません。

家具や照明にもこだわりを持ち、取り揃えています。
特にテーブルは奥行60cmと特殊なサイズを希望されましたので、ホワイトオーク材によってオーダーメイドしています。

内障子は壁の中に引きこまれ存在感を消します。
キッチン部分はレンジフードファンを取り付けるために天井を高くしています。又、天井高さを切り替える部分もアールを設けやわらかさを持たせています。


Before

改修前は引き違い戸によって、二つに分かれていた部屋。これらを一繋ぎにして部屋の汎用性を高めています。

和室との境にある通し柱は抜くことが出来ませんでしたので、そのまま残しています。

どちらの部屋も3枚引き違い戸になっていましたが、どちらも2枚分は収納のための戸で、残り1枚は廊下への出入り口の戸でした。


温熱測定

リノベーション完成後約半年経ち、一年で最も寒い時期を狙って住まいの温熱測定をさせて頂きました。
こちらの、お住まいは1階のみ工事を施し、2階は工事をしていないので、ビフォーアフターの温熱比較が出来る絶好の機会でした。

1階の工事対象範囲にはしっかりと断熱材を施工しているため日常の生活でも、その違いは体感して頂いていたようですが改めて機械を据えて比較してみると、その差がはっきりしました。

測定は令和3年2月14日から同22日までの9日間連続で機器を据えたままにしています。期間中2月18日には降雪もありましたが、アメダスでは2月20日に外気最低気温-3.1℃を記録しています。
同日の1階室内では室温10.3℃、2階室内では室温約7℃程度と、やはり差が出ています。測定期間中の最大室温は2階の方が高い数値ですが、暖房機器によって得られている室温になりますので、
そこを比較するのでは無く測定期間中の平均室温を比較して頂くと1階は16.2℃、2階は12.2℃と、なっています。
その差は4℃ですが一般的には太陽の陽射しの影響を受けやすい2階の方が室温が高くなることを考えると、断熱施工による効果がかなり出ていると判断できます。

但し、単純に断熱材を入れれば良いと言うことではありません。温熱に対するきちんとした学びがあって、そしてその学びを施工に反映出来ているからこその効果なので、誰に任せても良いということではありません。

又2階では温度と湿度は反比例して挙動しているのに対し、1階では温度、湿度ともに比例して挙動しているのが興味深い結果となりました。
これまでの温熱測定では、温度と湿度は反比例して挙動するケースが多かったので、その原因が何だったのかも究明する必要があるかもしれません。

グラフの見方
以下のデータの見方としては人が就寝時には暖房機器をオフにするため、自ずと室温が下がっていきます。
断熱性能の高い部屋ではその室温の低下のスピードはゆっくりで、逆に断熱性能の低い部屋では室温低下のスピードが速くなります。そしてグラフ中で急に室温が上がるタイミングがありますが、
起床したタイミングで暖房器具をオンにするため、そこで室温が上がり始めますが、中途半端な時間帯で室温の変動が大きくなっている場合は外出されたか帰宅されたタイミングになるとお考え下さい。

以下が1階のデータで、赤が温度を、青は湿度を現わしています。更に下にある2階のデータと測定期間中におけるアメダスデータなども含めて比較して頂くと、より分かりやすいと思います。
いずれも横軸は日付を、縦軸は温度と湿度を示します。

1階温熱測定グラフ

そして以下が2階のデータです

2階温熱測定グラフ

そして、こちらは測定期間中における福知山市のアメダスデータです。

アメダスデータ

ワンポイント!

今回の工事で上記の温熱測定結果を得るために気を配ったポイントが幾つかあります。

ここでは、その1つを紹介させて頂きます。

断熱施工のイメージ図

上は断熱材をどこにいれるのかと言う事を示した図です。

一般的には床下、壁、屋根又は天井面(上図ピンク着色部)に断熱材を入れることを意識しますが

こと、リノベーション工事では壁や床には一生懸命断熱材を入れるのですが、下屋の部分への

断熱施工(上図、緑着色部)を忘れがちです。又、下屋部に断熱材を入れたとしても

実は、それだけでは2階胴差(梁)部分はいくら木材があるとは言え熱橋になります。

熱橋とは熱を伝えやすい部位のことです。

そこで、今回の工事では胴差の部分にも断熱材を貼り付けました。

それが上図の青色着色の部分です。

天井断熱施工中

上の写真が実際の現場の施工写真ですがイラストの青色着色と同様に

断熱材を胴差の横に貼り付けて屋根面に達する所まで貼り上げています。

天井断熱施工中

そして上記写真のように下屋の水平天井部分にも10cm厚の断熱材を

二重に重ねて施工し、先の胴差に貼り付けた垂直断熱材と突き当たる所まで

伸ばしていきます。

こうすることで、断熱材が切れることなく一つながりになります。

更に安全性をみるなら以下の図のように

下屋の水平断熱材をもう少し奥まで伸ばしておくとより良いのではないでしょうか。

断熱施工イメージ図2

施工 / 有限会社 ウッディーコーセー
撮影 / 中村写真工房


初期案

当初案からは、殆ど変わりなく完成していますが、大きく変わったのはテレビの位置です。当初案のままではキッチンからテレビが見えないため、キッチンと真反対の壁にテレビを据えることにしています。
他には天井の仕上げをレッドシダー貼りに変更しています。真っ白な、のっぺりした空間であるよりも、木で囲まれた感が出やすくレッドシダーの個性が空間をより引き立ててくれると思いました。
丸い入り口の小上がりも当初案のまま採用しています。

提案時イメージパース
提案時イメージパース2
提案時イメージパース3

福知山:暮らしの“核(コア)”だけを整えて、
    体感と居場所を更新した家(丁寧に暮らす家|2020)

課題:子ども独立後、夫婦二人が「これからを丁寧に暮らす」ため、落ち着きある質の高い空間と“暑さ寒さの解消”が必要だった。

  • 判断の芯:住まい全体ではなく、長く過ごす場所=住まいの核(コア)を工事する 「コアリノベーション」で、コストを抑えつつ居心地と温熱環境を整える

  • 効き方:1階断熱強化の効果を、工事していない2階と温熱測定で比較し、平均室温で差(約4℃)を確認できた

この家の最初にあった課題(編集=暮らしの再編)

  • 夫婦二人の暮らしに合わせ、まずは 落ち着きある質の高い空間をつくる必要があった

  • 夏の暑さ、冬の寒さから身体を守る必要があった

  • 空間の感じ方を、素材・天井高さ・開口形状/位置/大きさの操作で、居場所ごとに変化させる

敷地・条件(データ)

  • 建築場所:京都府福知山市

  • 敷地面積:143.07㎡/建築面積:52.39㎡/延床面積:97.02㎡

  • 工事対象面積:39.78㎡(住まいの核を中心に)

  • Q*値:6.0(温暖地省エネ基準相当6.4をクリア)

芦田の判断(判断3点セット)

① 捨てたこと(やらない判断)

  • 住まい全体を一気に工事する(フルリノベ)
    → コストを抑えつつ、居心地と快適性を上げるため「核(コア)」に範囲を絞った

② 優先したこと(厚くした土壌)

  • 編集(暮らしの核):一日の多くの時間を過ごす場所を中心に、空間の質を上げる

  • 熱(温熱改修):工事対象範囲をしっかり断熱気密と気流止め対策をし、体感でわかる差をつくる

  • 木(素材の説得力):国産木材を中心に多用し、潤いある暮らしを支える(コアリノベーションの考え方)

③ どう効かせたか(設計の手段)

  • 天井高さを切り替え、素材を吟味し、開口部の形状・位置・大きさを操作して「居場所ごとの感じ方」をつくった

  • “ホテルのように、非日常だが落ち着く”雰囲気を参照し、余白に小上がりの居場所を設けた(入口を丸くして“こもり感”を強めた)

  • 特殊寸法(奥行60cm)のテーブルをホワイトオークでオーダーし、生活の中心道具の質を整えた

  • 内障子は壁内に引き込み、存在感を消す。キッチンはレンジフードのため天井を高くし、切替部にアールを設けて柔らかくつないだ

  • 断熱は「忘れがちな下屋」や熱橋になりやすい胴差(梁)周りまで連続させる施工を行った

  • 間仕切り壁(部屋と部屋の間の壁)の床下や天井裏から流入する気流を防ぐための気流止めに気を配った

確認できたこと(温熱測定=証拠)

  • 完成後約半年、最寒期を狙い 令和3年2/14〜2/22の9日間連続測定(1階のみ改修/2階未改修のため比較が可能)

  • 外気最低気温 -3.1℃(2/20、アメダス)の日に、室温は 1階10.3℃/2階約7℃

  • 測定期間の平均室温は 1階16.2℃/2階12.2℃で差は約4℃/一般に日射影響で2階が上がりやすいことを踏まえると、断熱施工の効果が大きいと判断できる

暮らしに起きた変化(効き方)

  • “丁寧に暮らす”の核となる場所が、落ち着きと居心地を持った空間として立ち上がる

  • 小上がりの居場所が「こもれる余白」として機能し、暮らしの速度が整う

  • 温熱は体感だけでなく、測定比較で差が見える

  • 夏、外出から帰っても家の中に熱がこもっていない

  • 冬、エアコンだけで一定温度を保てるため家の中での活動が一か所にとどまらず活発に動ける

この実例が向く人

  • フルリノベではなく、「暮らしの核」から整えてコストを抑えたい

  • 断熱改修を“入れるだけ”で終わらせず、効かせ方まで詰めたい

  • 夫婦二人の暮らしに合わせて、居場所の質(落ち着き)を更新したい

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