リノベの勘所 Narito Ashida リノベの勘所 Narito Ashida

リノベの勘所 第3話

ヘルメットを被り紺の作業着を着た男性が住まいの外壁に計器をあてがっている。手元にはタブレットを持ち、後ろには計器を仕舞うケースが置かれている。

写真はイメージですが点検商法にはお気をつけ下さい

先ずは住まいの健康診断

リノベーションの相談を受けると、

「キッチンを新しくしたい」

「寒い家を暖かくしたい」

「子どもが独立したので間取りを変えたい」

といったご要望を伺います。

もちろん、それらはリノベーションを考える大切なきっかけです。

しかし、実際に工事を考え始める前に、もう一つ大切なことがあります。

それは、

今の家が、どんな状態なのかを知ることです。

人間であれば、体の調子が悪くなったときに病院へ行きます。

そして、必要に応じて検査を受け、原因を調べます。

原因が分からないまま、いきなり薬を飲んだり手術をしたりすることはありません。

住宅も同じです。

これから何十年も住み続けるためにリノベーションをするのであれば、まずは今の家の状態を知る必要があります。

私はこれを、「家の健康診断」だと考えています。

見た目だけでは、家の状態は分からない

古い家を見るとき、多くの人はまず目に見える部分を見ます。

壁が汚れている、床が傷んでいる、キッチンが古い、お風呂が寒い、外壁の色が褪せている

こうした部分は、比較的分かりやすいものです。

しかし、住宅には普段の生活では見えない部分がたくさんあります。

例えば、

・床下
・屋根裏
・壁の内部
・基礎
・柱や梁の接合部
・給排水管

などです。

そして、本当に重要な問題は、こうした見えない部分に隠れていることがあります。

表面はきれいに見えても、床下に湿気が溜まっているかもしれません。

天井にシミがなくても、屋根裏では雨漏りが進んでいるかもしれません。

壁を壊してみると、柱が傷んでいることもあります。

だからこそ、

「見た目がきれいだから大丈夫」とも、「古いからダメ」とも、簡単には判断できません。

まず確認したい「家の4つのポイント」

リノベーション前に確認したいことはいくつもありますが、大きく分けると次の5つです。

1.構造は大丈夫か

住宅にとって最も重要なのは、やはり構造です。

基礎はどのような状態なのか、柱や梁に大きな傷みはないか、床が大きく傾いていないか、シロアリの被害はないか、耐震性は十分なのか

リノベーションでは間取りを変更することがあります。

壁を取り払って広いLDKをつくりたい、という要望も多いでしょう。

しかし、その壁が住宅を支える重要な壁だった場合、単純に取り払うことはできません。

見た目だけを変える前に、

「この家が、どのような構造で成り立っているのか」

を知る必要があります。

2.雨漏りや湿気はないか

住宅の劣化原因として、特に注意したいのが水です。

屋根からの雨漏り、外壁からの雨水の侵入、床下の湿気、配管からの漏水

水は、少しずつ建物を傷めていきます。

しかも、すぐに大きな問題として現れるとは限りません。

長い時間をかけて木材を腐らせたり、シロアリ被害を引き起こしたりすることもあります。

リノベーションで内装をきれいにしても、その原因が残ったままでは意味がありません。

だから、「まず水を止める」ことが重要です。

家を長く使うためには、見た目をきれいにする前に、建物を傷める原因を取り除かなければなりません。

3.シロアリの被害はないか

木造住宅の場合、床下の状態も重要です。

普段は見ることのない場所ですが、床下には住宅の健康状態を知るための多くの情報があります。

土台や柱にシロアリ被害はないか、木材が腐っていないか、湿気が多くないか、給排水管から水漏れしていないか。

こうしたことなどを確認します。

特に古い住宅の場合、「見た目には問題がない」

と思っていても、床下を確認すると予想以上に傷みが進んでいることがあります。

逆に、「かなり古い家だから傷んでいるだろう」と思っていたのに、床下の状態が非常に良いこともあります。

だからこそ、築年数だけでは判断できません。

4.断熱性能はどうか

昔の住宅と現在の住宅では、断熱に対する考え方が大きく違います。

冬になると家の中が寒い、暖房をつけても部屋がなかなか暖まらない、足元が冷たい、廊下やトイレに行くと急に寒くなる、

夏は2階が暑くて眠れない

こうした問題を抱えている住宅も少なくありません。

リノベーションでは、「壁を新しくする」「床を張り替える」

といった工事が行われます。

しかし、せっかく壁や床を解体するのであれば、そのタイミングで断熱性能についても考えることができます。

内装をきれいにしてから、「やっぱり断熱工事をしたい」

となると、再び壁や床を解体しなければならないこともあります。

だからこそ、

見た目を変える工事と、性能を向上させる工事は、できるだけ一緒に考える。

これもリノベーションの重要な勘所です。

リノベーションは、工事を始める前が大切

リノベーションというと、「どんなキッチンにするか」「床材は何にするか」「壁の色はどうするか」

といった、楽しい話から始まりがちです。

もちろん、それも家づくりの楽しみの一つです。

しかし、本当に重要なのは、その前にあります。

この家は安全なのか、どこが傷んでいるのか、これから何を直す必要があるのか。

そして、何を残すことができるのか。

前回の記事でも、「古い家だから建て替える」

と簡単に決めないことの大切さについて書きました。

リノベーションも同じです。

まずは家を知る。

その上で、残すものを決める、直すところを決める、性能を高めるところを決める

そして最後に、

暮らしをどう変えていくのかを考える。

この順番が大切です。

人間も住宅も、早期発見が大切

住宅の傷みは、放置すればするほど大きな工事になることがあります。

小さな雨漏りが、やがて柱や梁を傷める。

床下の湿気が、木材の腐朽につながる。

小さな水漏れが、気がついたときには大きな被害になっている。

だから、

「リノベーションすることが決まってから調べる」

のではなく、

「リノベーションできるのかを判断するために調べる」

という考え方が必要だと思います。

人間が健康診断を受けるように、家も定期的に状態を確認する。

そうすることで、大きな問題になる前に手を打つことができます。

家の価値は、表面だけでは分からない

古い家を見たとき、「きれいか、汚いか」、「新しいか、古いか」

だけで判断してしまうと、その家の本当の価値を見失うことがあります。

大切なのは、その家が、今どんな状態なのか。

そして、これからどこまで性能を高めることができるのか。

見た目には古くても、構造がしっかりしている家があります。

一方で、見た目は比較的新しくても、雨漏りや劣化が進んでいる家もあります。

だからこそ、リノベーションの第一歩は、デザインを考えることでも、設備を選ぶことでもありません。

まず、その家を知ること。

これが、これから何十年も住み続けるためのリノベーションの出発点になるのではないでしょうか。

リノベの勘所

「直したい場所」より先に、
「傷んでいる場所」を知る。

そして、

「古いから壊す」のではなく、
「今の状態を知ってから、これからを考える」。

リノベーションは、工事が始まってからではなく、

住まいの健康診断から始まります。

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リノベの勘所 第2話

建て替えかリノベか悩む夫婦

写真はイメージです

その家、本当に建て替えた方がいいですか?

「この家、もう古いので建て替えた方がいいですよね。」

住宅の相談を受けていると、そんな言葉を聞くことがあります。

確かに、長く住んできた家であれば、設備は古くなり、断熱性能も現在の住宅と比べれば十分ではないかもしれません。

壁や天井に傷みがあったり、間取りが今の暮らしに合わなくなっていたりすることもあります。

そうなると、「いっそのこと全部壊して、新しい家を建てた方がいい。」

そう考えるのも無理はありません。

でも、私はそこで一度立ち止まって考えます。

「本当に、この家は建て替えなければならないのだろうか?」

古い=建て替え、ではありません

築年数だけを見れば、確かに古い家です。

しかし、家の価値は築年数だけでは決まりません。

例えば、

・しっかりした柱や梁が残っている
・長い年月を経た木材に味わいがある
・庭と建物の関係が良い
・昔ながらの風通しの良い間取りになっている
・古い建具や左官壁が、その家らしい雰囲気をつくっている

そんな家もあります。

これらは、古いという理由だけで壊してしまうには、少しもったいないものです。

国土交通省も、既存住宅について
「いいものを作って、きちんと手入れして、長く使う」
方向への移行を重要な考え方として示しており、耐震・省エネなどの性能向上を含めた既存住宅の活用を進めています。

つまり、古い家だから価値がないのではありません。

「その家が今、どんな状態なのか」を調べてから判断することが大切なのです。

建て替えかリノベーションかは、
まず「家の健康状態」を見る

人間でも、年齢だけを聞いて健康状態を判断することはできません。

70歳だから体が悪いとは限らないし、40歳だから健康とも限りません。

住宅も同じです。

築年数だけでは、その家の状態は分かりません。

実際に建物を見て、

・基礎はどうなっているか
・柱や梁は傷んでいないか
・雨漏りはないか
・シロアリの被害はないか
・屋根や外壁の状態はどうか
・現在の耐震性はどうか
・断熱性能はどの程度なのか

などを確認する必要があります。

場合によっては、インスペクションや耐震診断などを利用することも有効です。

国土交通省も、既存住宅の流通やリフォームにおいて、インスペクション、住宅履歴、既存住宅の性能評価などを活用する仕組みを整備しています。

そして、もう一つ大切なこと

建物の状態を確認するだけでは、まだ答えは出ません。

もう一つ考えなければならないのが、

「この家で、これからどんな暮らしをしたいのか」

ということです。

例えば、

「家族が増えて部屋が足りない。」

「冬になると家の中が寒い。」

「台所が狭くて家事がしにくい。」

「親と一緒に暮らすことになった。」

「子どもが独立して、部屋が余っている。」

こうした問題があるなら、建て替えなくても解決できる可能性があります。

逆に、建物の状態や法的な条件、希望する暮らし方によっては、リノベーションより建て替えの方が合理的な場合もあります。

だから私は、

「リノベーションありき」でも「建て替えありき」でも考えません。

まず、その家と暮らしの両方を見るようにしています。

リノベーションは「古い家を新しくする」ことではない

ここで、前回の話にもつながります。

リノベーションというと、

「古いものを新しいものに交換すること」

と考えがちです。

古いキッチンを新しくする。

古い浴室を新しくする。

古い壁紙を張り替える。

古い床を新しくする。

もちろん、それもリノベーションです。

しかし、それだけなら、その家である必要はありません。

私はリノベーションをするとき、

「残すもの」と「変えるもの」を見つけること

から始めたいと考えています。

例えば、柱や梁は残す。

一方で、耐震性能は向上させる。

古い建具はできるだけ活かす。

一方で、断熱性能は現在の暮らしに合わせて改善する。

庭は残す。

その代わり、庭とのつながりが生まれるように窓や間取りを考え直す。

そんなふうに、

古いものを残すことと、新しい暮らしをつくることを両立させる。

そこにリノベーションの面白さがあります。

建て替えではなく、リノベーションだからできること

新築には、新築の良さがあります。

構造も設備もすべて新しくでき、現在の暮らしに合わせてゼロから計画できます。

一方、リノベーションには新築にはない魅力があります。

それは、

すでにそこにあるものを利用できること。

長い年月を経た柱。

手仕事の跡が残る壁。

古い建具。

庭。

周囲の風景。

その土地で積み重ねてきた時間。

こうしたものは、新築では新しくつくることができません。

だからこそ、私は古い家を見るとき、

「何が古いのか?」

だけではなく、

「何がこの家にしかないのか?」

を見るようにしています。

ただし、何でも残せばいいわけではありません

ここは誤解してほしくないところです。

「古い家を活かす」と言っても、すべてを昔のまま残す必要はありません。

安全性に問題があるなら、改善する。

断熱性能が不足しているなら、向上させる。

使いにくい設備は更新する。

暮らしに合わない間取りは見直す。

必要であれば、古い部分を取り除くこともあります。

大切なのは、

「残すこと」そのものを目的にしないこと。

その家にとって何を残す価値があるのか。

何を変えれば、これからの暮らしが良くなるのか。

その判断をすることです。

建て替えるかどうかは、
「古さ」ではなく「可能性」で考える

古い家を見て、

「もう古いからダメだ。」

と判断するのは簡単です。

でも、「この家には何が残っているだろう?」

「これを活かしたら、どんな暮らしができるだろう?」

と考えてみる。

すると、同じ家でも見え方が変わってきます。

もしかすると、建て替えなくてもいいかもしれません。

もしかすると、建て替えた方がいいかもしれません。

どちらが正解なのかは、家によって違います。

だからこそ、私は最初から答えを決め付けてしまわないことが大切だと思っています。

建て替えるか、リノベーションするか。

その答えを出す前に、

まずはその家をよく見る。

そして、その家でこれからどんな暮らしをしたいのかを考える。

そこから、本当のリノベーションが始まります。

リノベの勘所

「古いから建て替える」のではなく、
「残す価値があるから活かす」という選択肢もある。

建物の年齢ではなく、
その家の状態と、これからの暮らし。

その二つを見てから、建て替えるのか、リノベーションするのかを考えてみてはいかがでしょうか。

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リノベの勘所 第1話「何を変えるか」より「何を残すか」

リノベーションを考えるとき、「何を新しくしようか」と考えるのは当然です。

例えば、キッチンを新しくする、床を貼り替える、間取りを変えるなどと考えるかもしれません。

勿論、それもそうなのですが

でも、その前に一度立ち止まって、「この家にしかないものは何だろう?」と考えてみてください。

長い年月を経た柱かもしれません
古い建具かもしれません
当時の職人さんが拘って造った設えかもしれません

それらは、新しい材料に交換すれば手に入るものではありません。

リノベーションとは、古いものを新しくすることだけではありません。

その家が持っている価値を見つけ、それを残しながら、これからの暮らしに合わせていくこと。

私は、そこにリノベーションの面白さがあると思っています。

二間続きの和室は襖で仕切られ奥の部屋の突き当りには中心に床柱があり鴨居にはユニークな木材が使われています

リノベーション事例

この写真はリノベーションした部屋の事例です。

写真の奥に写る床の間の柱や鴨居?、床板は元々この家で、この場所で使われていたものです。

今、このような床柱を使って床の間を設けようと思うと大工さんの手間もそこそこ、掛かります。

そして何といっても面白いのは枝の部分が中抜きになっている鴨居?

こんな材料、今では絶対に使わないと思うのですが、当時の施主の好みなのか、職人さんの遊び心なのか貴重な財産と思って、残しました。

その他の部分の壁が白いのは予算の関係で、拘り切れなかった部分です。

柱や敷居は当時のまま使っているため色つやが全然、異なりますが、この家の持っている価値が、このような部分にあると考えます。

リノベーションは「足し算」ではなく「編集作業」

新しい設備を足す

断熱材を足す

収納を足す

部屋を足す

もちろん必要なものはあります。

しかし、リノベーションの本質は、

何を足すかではなく、何を残し、何を取り除き、何をつなぎ直すか。

つまり、

「家をつくり直す」というより「家を編集する」こと

これが本当のリノベーションでは無いかと思っています。


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